第4話 僕と彼女の小さな思い出
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んにそう言われたらすっごく嬉しいにゃ」
凛は照れ隠しにドリンクを一気飲みし、「ぷはーっ」と豪快に声をあげる。改めて凛をマジマジと見つめる。
上はライトグリーンのタンクトップに白のTシャツに、トーナルグリーンのサエサルパンツを着ていて、いつもはなにも手をかけないストレートの髪を左側でちょこんと結ってまとめている。
これが凛の運動するときの格好らしい......
なんてことを考えていると凛が地面の石を蹴りながらポツリとつぶやく。
「...ねぇ春くん。春くんはりんたちが中学二年生の時の関東大会の事覚えてる?」
「関東大会......あぁ、うん。覚えてるよ」
中学二年の関東大会。この大会を勝ち抜けば全国のキップを手に入れることができる大切な大会。
この時の凛を忘れるわけがない。一年に一回の大きな試合。凛はこの時から東京の代表選手になるかもしれないと委員会や様々な選手の注目を集めていた。先輩後輩からの期待の声、顧問のハードルを上げる発言、観客席から聞こえる彼女への称賛の声。
別に凛は『全国大会に絶対行く』とか、『みんなの期待に応える』だとかそう思っていなかった。
ただ、ただ純粋に走ることを楽しみたかっただけなのだ。
───走る場所はどこでもいい。ただ大きな青い空の下で長い長い道を風を切るようにただひたすらに走りたい
彼女はそう言っていた。だから彼女にとって”期待”だとか”責任感”だとか”威圧”は余計なモノだったんだ。
今まで感じてこなかった”期待”という重圧
その期待に応えなければならないという”責任感”
部活の顧問の”威圧”
凛も走ることを”楽しんで”やっていて、気楽だったその気持ちがすべて押しつぶされて表情が固くなっていき、自分のコースに向かった時には既に”いつもの凛”ではなかった。
だから彼女はいつもの走りをすることができずにその大会は幕を下ろした。
結果は言うまでもなかった。結果の話をして彼女を傷つけたくなかった。
「多分、あの時りんの事を春くんがちゃんと見てくれてなかったら...りんの隣に春くんがいなかったら今日まで陸上やってなかったと思うんだにゃ...。それにりん、ずっと春くんに言ってなかったことがあるんだよね。」
「言いたかったこと?」
「うん!」
〜☆〜
りんは...私は......ただ走りたかっただけ。
遠く青い空のそのまた遠い太陽が陸上競技場を、りんが走るその道を温める。
程よい風がりんの体を吹き抜け、女の人の英語だと
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