第七章
[8]前話
二人だけになってだ、バルダートはこうジャーファルに言った。
「謎は解けたな」
「はい、五人目の人だったんですね」
「そういうことか」
「何でもない話でしたね」
「案外な、しかし本当にヴェールだとな」
「顔わからないですからね」
ジャーファルはバルダートにしみじみとした顔で返した。
「そうした人には好都合ですね」
「全くだな」
「ええ、まあ確かにかえって目立ちましたけれど」
「何処の誰かはわからないのは確かだしな」
「そういうことですね」
「その通りだな、ところでな」
ここでこうも言ったバルダートだった。
「あんたのその名前な」
「ジャーファルっていうこれですか」
「それ姓なんだな」
「はい、そうですけれど」
「アラビアンナイトの方は名前だったけれどな」
「我が家はそうした名前です」
「そうか、ジャーファル家か」
バルダートは彼の名前のことを確認してからまた言った。
「格好いいな」
「そうですか」
「ああ、いい名前だよ。それじゃあ」
家の名前として格好いいからと言うのだった。
「その名前に負けない商売しないとな」
「そうですよね」
「それでいい奥さんも貰わないとな」
「そうですね、僕も」
「頑張れよ」
「はい、実際もう家で商売出来ますし」
露天商からというのだ。
「精進していきます」
「そうしなよ、ただ奥さんはな」
「五人目はですね」
「ややこしくなりますね」
「あの人みたいにな」
「そうですね、噂をすれば」
そうした話をしているとだ、道に。
そのヴェールの女性が来た、相変わらず顔はわからないが。
落ち着いた動きで歩いていた、ボディガードを連れて。彼女を見てだった。
ジャーファルは微笑んでだ、バルダートに言った。
「今日もお元気ですね」
「ああ、そうだな」
「今度うちの品物も買って欲しいですね」
「うちのもな」
笑ってこうも話すのだった、その彼女を見ながら。どういう人物かわかると謎も警戒もなく親しみを感じて。
ミラエ=アル=リフ 完
2016・4・29
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