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真田十勇士
巻ノ三十九 天下人の耳その十一

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「ですから」
「ううむ、そうですか」
「それはまた相当ですな」
「まさに天下無双の人たらし」
「噂は真実ですな」
 十勇士達も驚いて言う。
 そしてだ、彼等も幸村に言った。
「殿程の方でなければ」
「まれにですな」
「真田家を出て」
「羽柴家に行ってしまいますな」
「そして逆jに言えば」
 こうも言うのだった。
「殿の様な方だからこそ」
「関白様もですな」
「お声をかけられる」
「そうなのですな」
「そうでありましょう」
 また言った兼続だった。
「源四郎殿程の方だからこそ」
「関白様もですか」
「興味を持たれそして」
「お誘いもですか」
「退けられます」
 秀吉の出すもの、そして秀吉自身の魅力にもというのだ。
「そうなのでありましょう」
「それがしをそこまで、ですか」
「あの方は人を見る目も備えておられます」
 それもあるというのだ。
「ですから」
「それがしをですか」
「買われ」
 そしてというのだ。
「お声をなのです」
「そうですか」
「しかしです」
 兼続はここで微笑んで言った。
「源四郎殿はあくまで義を貫かれますな」
「他のものには興味はありませぬ」
「ではです」
「その義のままですか」
「歩まれて下さい」
 こうも言ったのだった。
「貴殿の思われる通りに」
「では」
「さて、道中は長いです」
 一転してだ、兼続は声を明るくさせて幸村達に言った。
「旅も楽しまれて下さい」
「はい、道中の酒や食事もですな」
「それもです、北陸は魚が美味うございます」
「では魚と酒をですな」
「楽しみつつ道中を進みましょう」
「それでは」 
 幸村は微笑んで兼続のその言葉にも応えた、そしてだった。
 彼は春日山から北陸道を通って都に向かうのだった。その道中も楽しみつつ。


巻ノ三十九   完


                      2015・12・30
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