巻ノ三十九 天下人の耳その七
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「よいな」
「生まれたところは違えども」
「義兄弟であるが故に」
「必ずですな」
「死ぬ時は同じですな」
「うむ、最後の最後まで戦い共に死ぬのじゃ」
ここにいる十一人でというのだ。
「必ずな」
「では」
「例え死地に入ろうとも」
「必ず生きて帰る」
「そうあるべきですな」
「このことは皆で誓うのじゃ」
何があっても生きることをというのだ。
「よいな」
「わかり申した」
「ではです」
「誓いそして」
「九州に赴きましょうぞ」
「是非な」
幸村は十勇士達にこうも言った、そしてだった。
彼等は今は上洛の準備をしてだった、それが整ったところで兼続から声がかかり春日山から北陸道を通り都に向かった。
春日城を出てすぐにだ、兼続は幸村の馬に己の馬を進めて尋ねた。
「この道は通られたことは」
「はい、ありませぬ」
そうだとだ、幸村はすぐに答えた。
「これまでは」
「左様ですな」
「今は雪がないですが」
「冬になりますと」
この北陸道はというのだ。
「どうしてもです」
「やはりそうですか」
「そのことが辛い道です」
「中山道と同じですね」
そう聞いてだ、幸村は兼続に返した。
「それでは」
「そうですな、中山道もですな」
「信濃はです」
この国はというのだ、上田もある。
「冬になりますと雪が深く」
「中山道もですな」
「通りにくくなりまする」
「左様ですな」
「雪は全てを覆います」
それこそというのだった。
「家も道も森も」
「まさに全てを」
「白く染めてしまいます」
「ですな、越後もです」
「はい、雪はですな」
「大層深い国です」
このことでもよく知られている、越後はとかく雪の多い国なのだ。
「それは春日山でもおわかりかと」
「はい、確かに」
「それで悩まされることも多いです」
そうだというのだ。
「実に」
「そして北陸道も」
「そうです、冬になれば」
まさにというのだ。
「雪に包まれてです」
「進みにくくなりますな」
「どうしても」
「ですな、しかし今は」
「はい、この通りです」
まさにというのだ。
「楽に進めています」
「雪がない故に」
「雪がなければ」
まさにというのだ。
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