1部分:第一章
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第一章
豚とトリュフ
トリュフは茸である。しかもこの上なく高価で美味とされている茸である。
このことを知らない人間はいない。そしてそれと共にトリュフは豚が見つけ出して掘り出すものであることも知らない人間はいない。豚はトリュフあってのものなのだ。
南フランスプロヴァンス。この地でもその豚を使ってトリュフを手に入れている。人間達はいつも森に豚を連れて入りそのうえでトリュフを探している。
「今日もだな」
「ああ、いいトリュフが見つかったよ」
「よかったよかった」
彼等はトリュフを見つかったことを喜んでいた。だがここで彼等はトリュフのことばかり考えていて豚のことは全く考えていなかった。豚のことは全くであった。
当然豚の口にはトリュフなぞ入りはしない。そのことを豚達も思うのだった。
「何かな」
「そうだよね」
「食べるのは人間達だけだからね」
豚達はその舎の中で話をしていた。人間にはわからない言葉で顔を寄せ合って話をしている。
「僕達の口には入らないし」
「どうしたものかな」
こう話し合うのだった。
「トリュフって美味しいのかな」
「美味しいに決まってるじゃない」
これは彼等は匂いだけでわかることだった。豚の鼻は人間のそれよりも遥かにいいものなのだ。それでそのこともわかるのである。
「それもかなりね」
「そうかあ。美味しいのか」
「人間はそれを食べるんだ」
「そうだね」
このことを話し合う彼等であった。
「何かさ。思うけれど」
「何を?」
「いやさ、トリュフって僕達が見つけるじゃない」
ここでこのことが話される。
「僕達が匂いで見つけてそれで人間が掘るよね」
「うん、そうだけれど」
「それがどうかしたの?」
「それだよ。どうかな」
彼等はさらに話をしていく。
「どうかなって?」
「人間だけが食べて僕達は一口も食べられないじゃない。おかしくない?」
「おかしいって?」
「見つけ出すのは僕達だよ」
またこのことが話される。
「それでどうなのかな。食べられないっていうのは」
「考えてみれば不公平かな」
「そうだよ、不公平だよ」
こう話されるのだった。
「本当にね。不公平じゃない」
「ああ、そうだよね」
「確かにね」
皆ここで気付いたのだった。
「僕達がいないとトリュフがあるってことも気付かないのにね」
「それでも僕達は食べられない」
「本当におかしいよね」
「そうだね」
気付けばそれが確かなものになっていく。これはもう止まらなかった。
「それじゃあどうする?」
「どうするって?」
「明日もまだトリュフ見つけに行くけれど」
彼等も暇なしであった。酷使されていると言ってもいい。何故か動物愛護
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