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恋姫†袁紹♂伝
閑話―呂布―
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 南皮にある袁家の屋敷、その中庭に位置する修練場で二人の武人が対峙していた。

「悪いな、私の鍛練に付き合わせて」

 一人は趙雲、真名を星。袁紹に仕える事になってから、彼女は今まで以上に鍛練に力を注いだ。
 そんな彼女が好むのは試合、実戦形式の鍛練である。

「……」

 相対するは袁家最強戦力の呂布、真名を恋。悪びれる星に対して首を横に振る。
 
 以前の試合で星を軽くあしらった後、彼女はことあるごとに鍛練をせがむようになった。
 顔を合わせる度に鍛練に誘うのは、客観的にどうかと思うが―――煩わしいと思ったことは無い。

 恋は孤独の中で生きてきた。強すぎる力は敵に恐怖を、味方には畏怖を与える。
 畏怖、そう言えば聞こえは良いが、自分を避ける点では敵と何ら変わりは無い。
 自分自身、感情を表に出すのが苦手なのも相まって、他者との距離は開くばかりであった。
 だが、自分には家族達が居た。恋の上辺、脅威的な武力にばかり目がいく人間達とは違い。
 彼等は恋の内面、その奥にある暖かさを好いて共に在ってくれた。
 やがて音々音とも出会い、恋が孤独を感じる事は無くなった。

 それでも―――酒を飲み交わしながら騒ぎ合う者達を遠目に羨ましいと思ったものだ。
 
 ここ南皮に来た頃は不安が多かった。果たして自分は、家族達は受け入れられるだろうか。
 そして……自分を恐れない理解者が現れるか。
 
 恋の不安は、袁紹を始めとした南皮の住民に一蹴された。
 そもそも規格外が集まりつつある袁家だ、その筆頭が当主なのだから驚きである。
 彼らの目からすれば恋の規格外の武力も、袁紹の御輿も似たような物。拍手喝采しこそすれ、恐れるものでは無いのだ。
 南皮の住民、袁家の家臣達は恋が戸惑うほど無防備に近づいてきた。
 そうなれば話は早い、元々誰とでも打ち解ける暖かさを持った女性である。
 一月もする頃には家族と音々音を含め、すっかり袁家の一員と化していた。

 

 だからこそ悪意も無く鍛練に誘う星を、歓迎こそすれ邪険する気にはならないのだ。

「ハッ!!」

「!?」

 過去を思い出していると、恋の胸に向かって何かが伸びてきた。
 
 鍛練用の槍だ。怪我をしないように刃が外され、先端に丸みを持たせている。
 それが直ぐそこまで迫っていた。恋は瞬時に後方に飛び退くことでこれを回避、数瞬でも遅れれば容赦なく叩き込まれていただろう。

「我が槍を前に考え事とは、ずいぶん余裕だな恋」

 突きを放った星は犬歯を見せながら苦言を呈する。
 
 どうやら先程の突きは、恋の意識を向かせる為のものだったようだ。
 そこまで理解して恋は自己嫌悪に陥った。今は試合の真っ最中、普段は飄々としている星も
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