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恋姫†袁紹♂伝
閑話―呂布―
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切り音が聞こえてくる。聞きなれたその音色は素振りの音だ、猪々子の大刀よりも小振りな音。

「……!」

「む、恋ではないか」
 
 素振りをしていたのは袁紹だった。恋の来訪にも止まる事無く、正眼に構えた剣を振り上げて下ろす。驚くべきはその完成度。剣筋には一切の乱れが無く、振り下ろした刃は同じ位置で静止している。
 恋ですらここまで正確には振れない。いったい幾千、幾万振ればその域に達するのだろうか……

「……」

 邪魔をすまいと壁に背を預けて座る。やがて疲れもあってか、規律の良い風切り音を音色に目蓋が閉じていった。






「そういえば――」

 一頻り素振りし終わった袁紹が突然口を開き、恋に話しかける。
 寝惚け眼で袁紹の言葉に意識を向けたが――……
 
 彼女の睡魔は次の一言で完全に吹き飛んだ。

「――恋とは試合った事が無いな」
  
  

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