閑話―呂布―
[7/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
兵士達が隠されている御輿を取り押さえていた。
将を射んと欲すれば先ず馬を射よ、王佐の才に違わない手腕である。
しかし――
「いつから御輿が一つだと錯覚していた」
「なん……ですって!?」
いつの間にか第二の御輿が袁紹の背後から現れ、桂花達の目が大きく見開かれた。
袁紹とて凡愚では無い、御輿による逃亡には限界があることを理解していた。
一番の危険は御輿を封じられること、王佐の才であれば必ず手を打ってくる。それを読んでいた袁紹は、作業の合間に即席の御輿を作らせていたのだ。
「フハハ! あばよ〜とっつぁ〜ん」
「今よ、恋!」
「……」
「む!?」
御輿に乗ろうとした袁紹の袖をいつの間にか恋が掴んでいる。否、摘んでいる、指先二本で軽く……
いくら恋が剛力とはいえ、袁紹がその気になれば振り払える力加減。
「恋、すまぬが――……ッ!?」
無理矢理外す気にはなれず、穏便に離してもらうため声をかけ―――絶句。
恋は離したのだ、捨てられた子犬のような顔で。
襲い来る罪悪感。 めいぞくのココロに 999のダメージ!
これぞ桂花が仕掛けた、足では無く心を縛る策。
結果名族は、恋の愛らしさの前に大敗。作業員達との大義を捨て、家臣の元に降った。
日が沈み、南皮の食事処を渡り歩いていた恋は屋敷に帰って来た。
ある日は星達との鍛練、ある日は家族とお昼寝、今日は袁紹達との戯れ。恋の毎日は大体これの繰り返しであるが、飽きる間などあるはずもない。
鍛練にせよ、騒動にせよ、日々目新しい発見ばかりだ。そして今も――
「……?」
自分の部屋に向かう途中、中庭が一望できる通路から不自然な明かりを発見した。
修練場の方だ、今の刻限に鍛練する者を恋は知らない。彼女は好奇心の赴くまま、そこに向かった。
「誰だ! りょ、呂布様!?」
「呂布様、何か御用で?」
修練場の前には兵士が控えていた。ただの見張りではない、鎧を纏っていないが重騎隊の者達だ。
厳重な警備、仮に恋が突破を試みても時間が掛かるだろう。
「……?」
「ああ、この中ですか……恥ずかしがりやが居るのですよ」
言って、顔を見合わせながら笑い出す兵士達。
恋の疑問は益々深くなるばかりだ。そんな彼女の様子を感じ取ったのか、兵士が修練場の扉を開け入室を促す。
“いいの?”と目で語りかけると、“呂布様であれば問題ありません”と答えが返って来た。
修練場に入った恋、彼女が始めに感じたのは熱気だった。窓が締め切っており、外の程よい風は一切無い。
壁を隔てた中央からは規律的な風
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ