閑話―呂布―
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なもの。断じて突きの軌道を反らせるほどの突風ではない。刃渡りの大きい猪々子でも不可能だろう。
「それで、あれは何という技なのだ?」
「……技?」
返って来た答えに頬をひくつかせた。
あの局面、恋は土壇場で思いつき実践したのだ。驚くべきは己の勘に全てを委ねられる心意気。
完成され尽くした武技にも関わらず、成長し続ける至高。彼女とだけは敵対したくないと、心底思った。その後、幾度か試合を重ねたが後一歩及ばない結果に終わる。
袁家の屋敷には、当家の人間であれば皆が知っている癒しスポットが存在する。
中庭、その中央に位置する一際大きな木の根元に、恋と音々音を含めた家族達が寝息を立てていた。恋を中心に、彼女の膝を枕代わりに音々音が、さの周囲を家族が寄り添っている。
互いの体温、風のせせらぎ、木の葉が擦れ合う音色、何とも気持ち良さそうである。
「いつ見ても癒されますね〜」
「アタイも眠くなってきたぜ……」
「今日ばかりは、鍛練に誘えそうに無いな」
その癒しスポットは一部の通路から見ることが出来るため、発見した者達は皆が足を止め頬を綻ばせながら溜息を洩らす。
一人が足を止め、二人目が足を止め、やがて大人数が集まり人の気配を感知した恋がむずがりだし、それを確認した者達が慌てて散会していくのが、お決まりの光景だ。
その通路にガラガラと音を立てながら風がやって来た。
「おやおや、また恋さんを視姦ですかぁ。皆さんお好きですね〜」
「これ、人聞きの悪い。ところでその引いて来た物は……?」
「これですか? 直ぐに政務を抜け出す、いけない名族さんを乗せる為の物です〜」
『……』
音の正体は木馬。風は袁紹を乗せる為と言ったが、木馬の背は三角に角ばっており、とても人を乗せる代物には見えない。そして宝ャの『乗せた後は重しを追加するんだゼ』という言葉で、ソレが改めて拷問器具の類であると理解した星、斗詩、猪々子の三人が頬を引き攣らせた。
「……馬」
「うぉ!? 恋!!」
「あらら、起こしてしまいましたか?」
いつの間にか側で木馬を眺めていた恋。風の謝罪を込めた言葉に首を振り、起きた理由を口にする。
「……呼ばれた」
「ああ、桂花さんがあの笛を吹いたですね?」
寝ぼけ眼で頷く。
「馬、乗っていい?」
『!』
「……残念なことに、これはお兄さん専用なのです〜」
「残念……」
表情は変わらないが余程乗りたかったのか、恋は長く飛び出している髪の毛、所謂『アホ毛』をしょんぼりとさせその場を後にした。
「まさか乗りたがるとは、恋さんにそっちの趣味が?」
「いや、純
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