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恋姫†袁紹♂伝
閑話―呂布―
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た、彼女の規格外は幾度と無く体験してきたが改めて思う。
 呂奉先こそが大陸最強であると。
 
『……』

 再び両者の間に沈黙が流れる。
 恋の苛烈な攻めを受けきる自信は星に無い。常に自分が仕掛ける、そこに勝機があるはずだ。

「ハァッ!」

 再び三連突き、虚を突く事無く正面から放たれたソレを恋は難なく防いだ。
 
「!」

 防ぎきった瞬間、星との距離が縮んでいる。
 間合いに入れるべく一歩踏み出したが、星も自分から接近してきた。
 恋が驚いたのは星の構え、先程まで末端を握っていたソレが中央に戻っている。
 あの三連突きの後、槍を引きながら瞬時に持ち替えたのだ。
 持ち手を変えた事により間合いが狭まる、近接した状態で再び三連突きが放てるのだ。

 これが星の秘策、恋を破るために編み出した『詰みの三連』その前準備である。
 先手を取れれば必ず勝てる技、前提条件として中段の構え、そして相手の間合いで先制する必要がある。
 最初に放った突きは牽制、接近と同時に今の状況に持ち込むための布石だ。

 一の突きを放つ、狙うは右肩。恋は肩を反らし辛うじて避ける。
 二の突きは水月、胸に向かってくるソレを恋は得物で防ぐ。

 ――成った

 一で体勢を崩し、二で得物を縛る。相手が強者だからこそ通用する奥義。
 星の神速の突きも、ある程度強者が相手になると防がれる。しかし三連の間に反撃は出来ない。
 だからこその詰みの三連。目の前には確実な成果、左半身が隙だらけな恋。

 三の突き、左脇腹―――

「!?」

 次の瞬間、星は弾かれるように飛び退いた。
 彼女自身、何故後退したか理解していない。武人としての直感が危険を感じたのだ。

「……残念」

「――ッ」

 星はすぐに言葉の意味と、自身が感じた危険を理解した。
 左脇腹、突きを入れるはずだったその直線上に恋の左手が在る―――掴もうとしたのだ!
 直感に従い後退したため事なきを得たが、あのまま突きを放ったらどうなっていたか……

 ――掴まれたと見るべきだ

 握力と反射神経に絶対の自信があって成せる業。恋は詰みの三連さえも本能で破ってみせた。
 観戦者が居ないことが惜しまれる名試合。否、仮にいたとしても何が起きたのか……
 説明を求めたところで、「二人が接近した瞬間弾かれるように距離が開いた」と言うしかあるまい。
 それほど刹那の瞬間、技と本能の極地がぶつかり合ったのだ。

「堪らんな」

 三度、距離を開け相対する両者。星の口元にはまだ微笑みがあった。
 強がり……かもしれない。不意を衝いた三連も、対呂布用に編み出した詰みの三連も通じなかった。
 
 ――だと言うのに、私は嬉しくて仕方が無い!

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