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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第六十二話 ベーネミュンデ事件(その2)
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、ケスラー少将。ミューゼル提督はまだ会議室ですか?」
頼むから微笑むのは止めてくれ……。隣で副官が睨んでいる。こっちが本当だろう。
「もうすぐこちらに戻るでしょう。提督に何か?」
「……少々微妙な問題が起きまして……」
語尾を濁した? 珍しい事も有るものだ。ミューゼル提督が艦橋に入ってきた。ミュラー、ロイエンタール、ミッターマイヤー、キルヒアイスが後から続く。先に伝えておかなくてはなるまい。
「少しお待ちください。今提督をお呼びします」
俺は足早にミューゼル提督に近づいた。
「提督」
「なんだ、ケスラー」
「ヴァレンシュタイン中将が提督をお待ちです」
「ヴァレンシュタインが」
少し不審そうな表情でキルヒアイス中佐を見る。中佐も同様だ。どうもこの二人はヴァレンシュタインに素直になりきれていない。彼がこの二人に悪い感情を持っている様子は無いんだが……。
「既に一時間ほど待っているようです」
「一時間!」
ミューゼル提督だけではない。周りも皆ぎょっとしている。
「ミューゼル提督」
気がつくと中将が傍まで来ていた。相変わらず表情は柔らかい。
「ヴァレンシュタイン中将、随分と待たせてしまったようだ」
少し焦ったように提督が答えた。
「いえ、約束もとらずに来たのはこちらですから。少しお時間をいただきたいのですが」
この状態で嫌といえる人間はいないだろう。
「……内密の話かな」
「いささか」
「もう一度会議室に行くか、私だけかな」
「……いえ、皆さんにも聞いてもらったほうがいいでしょう」
少し考えてから答えてきた。
「そうか、では会議室に戻ろう」
会議室に戻り、それぞれ適当に席に着くとおもむろにヴァレンシュタインが口を開いた。
「見ていただきたいものがあります」
ヴァレンシュタインは一枚の書簡を懐から取り出すとミューゼル大将に手渡した。
提督はその書簡に目を通すと一度ヴァレンシュタインに眼をやり、また書簡に眼を落とした。そのまま睨むように書簡を見ている。
「提督?」
ミュラーが気遣うように声をかけた。
「ああ、すまない。これにはこう書いてある。宮中のG夫人に対しB夫人が害意をいだくなり。心せられよ」
なるほど、確かに微妙な問題だ。皆顔を見合わせている。
「ベーネミュンデ侯爵夫人、幻の皇后ですか」
ロイエンタールが口に出す。“幻の皇后”に皆がロイエンタールを見詰めた。
「中将、これを何処で」
提督が書面をヴァレンシュタインに返しながら問いかけた。
「昨夜の事ですが、国務尚書からこれと同じものを見せられました」
「? ではこれは?」
「昨夜、家に帰るとこれが……」
「同じものが国務尚書と中将の下に?」
提督の問いにヴァレンシュタインは無言で頷いた。
「ミ
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