暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
Side Story
少女怪盗と仮面の神父 11
[4/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
なーい」
 笑顔が怖い。嫉妬と殺気を隠してない女衆の笑顔が怖い。
 (たった一人を勧誘する為に此処までするの!? 信じらんない! アーレスト神父の卑怯者ーッ!)
 「すみません、皆さん。ミートリッテさんとハウィスさんに込み入ったお話がありますので、一時彼女達をお借りしてもよろしいでしょうか?」
 「「「勿論です!」」」
 ミートリッテを押し潰す勢いで迫っていた女達が ずぁっ と二手に分かれ、彼女とアーレストとの間に一本の道を作った。
 軍隊の整列さながらの動きに、事態を見守っていた数少ない男達の表情が強張る。
 冷静でいられた者は全員、寸分違わず同じ瞬間に同じ言葉を思い浮かべただろう。
 なんじゃこりゃ……と。
 「改めてお話しましょうか。ね? ミートリッテさん」
 優雅な足取りでミートリッテの前に立ち、呆然自失の彼女の手を引いて、ハウィスと共に家の中へ入っていくアーレスト。扉を閉める直前、女衆へ向けて「皆さんも暗闇は危険ですから、お早めにご帰宅なさってくださいね。貴女方に何かあっては、心配で夜も眠れません」と、笑顔付きの声掛けも忘れない。
 黄色い悲鳴が外で響くのを、ミートリッテは頭を抱えながら聴いていた。
 「ごめん……ね」
 申し訳なさそうなハウィスの震える言葉に顔を上げれば
 「……そんな心無い謝罪は要らないよっ」
 口元を押さえてふるふると肩を揺らすハウィスに、なんかもう……脱力するしかなかった。
 本人は堪えてるつもりかも知れないが、頬を真っ赤に染めて完っ璧に笑ってる。
 「すみません。こんな状況になるとは思ってなくて」
 (嘘つけーッ! わざとでしょ! 絶対わざとでしょおーッ!)
 ハウィスに謝罪するアーレストの背中へ飛び蹴りを噛ましたくなるのは、ごく自然な感情の流れだと思いたい。
 「仕方ないわ。こうなってしまったら、私にはどうにもできない。彼女達に説明したって、どうせ受け付けてくれないもの。ミートリッテ自身でなんとかしてね」
 「なんとかできるなら、こんな事にはなってないよぉ……」
 「まぁまぁ。いきなり入信、即刻修行とは言いません。社会勉強のつもりで歴史や背景を軽くなぞっていただいて、どうしても駄目だと思ったら、それ以上の無理強いはしませんから」
 その軽いなぞり期間が極めて大迷惑なのだが。
 大体、無理強いはしないってのも嘘だよね。諦めるつもり、全然無いよね。
 一発殴りたい。
 「今日はもう暗いです。自警団の方々のお仕事もありますから、このまま出歩かないほうが良いでしょう。明日、教会でお待ちしていますね」
 「決定なの!? ねぇ、決定なの!? 私の意思は尊重してくれないの!?」
 「良いじゃない。元々教会で使われてる物に興味があったんでしょう? 何かは知らないけど、ついでにじっく
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ