精神の奥底
57 少年の美学
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し。結果オーライかな?」
しかし彩斗は同時にValkyrieのネットワークダウン事件の与えた影響の大きさを再び痛感していた。
高垣の持っていた端末のデータの通りなら、これで終わりのはずだ。
しかし今、何か大きな行動を起こされれば、ひとたまりもない状態であるのは疑いようがない。
もちろんValkyrieそのものの狙い自体はニホンに火種を撒き、武器の需要を引き出すことで、そして利益を上げること。
ニホンが紛争地帯になるのは副産物に過ぎない。
だがValkyrieの中の安食という男単体に絞った場合、話は大きく変わる。
安食の経歴、性格からすると、利益こそが副産物であり、紛争地帯という混沌こそが終着点にも成り得る。
利益が上がるのは間違いないが、関連諸国が国交を断絶すれば、海外の産業には影響が出るだろうが治安の悪化は避けられる国もあるだろう。
しかしこの国の治安が悪化するのだけは避けられない事態だ。
「……」
彩斗は店を出ると、不安を抱えたまま帽子を深くかぶり直す。
季節的に気温は高いが、湿度はそれほどでもなく、いわゆる梅雨の時期にありがちなジメジメ感が無い。
ただ10月にもなって太陽の高度は下がってきており、日光が頭の上ではなく、目線より少し上の当たりから差し込んでくる。
メリーは眩しそうに目を細め、顔の前に手を出した。
しかし彩斗はアイリスはともかくメリーには少し辛いだろうと見越しており、紙袋の中から帽子を取してメリーの頭に乗せた。
「ホラ。多少はマシになった?」
「あれ?帽子も買ったんですか?」
「10月にこの炎天下だからね。日射病防止にと思って。それにホラ、僕のと同じだ」
「似合ってる、メリーさん」
「ありがとうございます!」
「じゃあ、行こうか」
自動ドアをくぐり、今までの冷気の感覚を一瞬で忘れる灼熱の世界に舞い戻り、再び歩き始めた。
昼時に近づき、少し気温が上がったからだろうか。
あの人のごった返した地下道に逃げ込み、待ちゆく人々の数は減り、歩きやすくなっている。
そして3人も慣れてきたのか、何気ない話をしながら歩くだけの余裕ができていた。
そんな時、彩斗は一瞬、まるで電気を消したように、太陽の光が当たらず、ふと足を止めた。
「?あれは…デンサンタワー……」
「サイトくん?」
「タワーがどうかしたんですか?」
「いや……」
「アイリスさん、もう知ってると思いますけど、あれがデンサンタワー、この街のシンボルです」
「すごく高い……」
「建築が始まったのは3年前で、完成したのは1年くらい前です。すごいですよね、あんな高さのものが2年そこらでできるなんて」
「デンサンタワー……電波塔……」
「兄さん?」
「サイトくん?どうかした?」
「…いや」
「後で登ってみま
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