精神の奥底
57 少年の美学
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る。
するとアイリスが売り場の方を向いているのに気づいた。
「……欲しい服があるなら、遠慮せずに言っていいんだよ?」
「いや……その。なんでもない」
「正直じゃないなぁ。まぁ、いいか。また来ようよ」
「……うん」
「あっ、そうだ!!お客様!これを!」
店員は不意に思い出したように名刺サイズの紙を渡してきた。
何かの宣伝文句と、QRコード、URLなどが載っている。
「これは?」
「うちの通販サイトで今度から自宅のパソコンやモバイル端末から、ドレスアップデータの試着とダウンロード購入ができるようになるんです!あと無料会員登録でドレスアップデータのクラウドクローゼットというのか、端末本体に保存したり、チップの状態で持ち歩かなくても、ネット環境があれば、いつでも着替えができるようになるので、ぜひご利用下さい!」
「ネットナビが自由に着替えられる時代が……嬉しいな」
「へぇ、すごく便利ですね!!ねぇ、兄さん!」
「あぁ、うん。んっ?」
彩斗はおかしなことに気づいた。
チラシには「10月28日サービスSTART!!事前登録受付中!!」とポップな文字で書かれている。
今日は31日、既に過ぎている。
「でもサービス自体は3日前に始まってるみたいだけど?」
「ハイ…例のインターネットシステムのダウンの影響でサービスのスタートが延期なってしまったんです」
「それは……災難だったね」
「ハイ。うちの社運を賭けて開発したサービスで、注目されていたし、今後目玉サービスになる予定だったので、株価とかいろいろ影響が出ちゃってます。まぁ、幸い、実店舗での営業には影響はありません。むしろ今まで通販を使っていた方々もご来店頂けているので、客足自体は増えているんですけど」
「早く復旧するといいね。じゃあ」
「ハイ、ありがとうございました!またのご来店をお待ちしております!!」
彩斗は珍しく爽やかな笑顔で下りのエスカレーターに乗った。
自分の事を覚えている人がいてくれたこと、そして何よりネットナビも人間同様の生活が送れる世界が近づいてきているということが嬉しかったのだ。
そしてそれはアイリスとメリーも同じ気持ちだった。
「少し気分が変わったでしょ?」
「うん、ありがとう。買ってくれて」
「いや、僕のお金じゃないし。でもこれでお互い涼しくなった」
「…ごめんなさい。私が暑苦しい格好だったから」
「いや僕らのわがままだ。本当は端末の中に入っていた方が楽なのに、コピーロイドまで使って現実でいろいろさせてしまって」
「兄さん、これで1つ目的は果たせましたけど、ここからだと次の目的地は遠くないですか?」
「でも歩いて10分っていうところかな。予定外ではあったけど、アイリスちゃんの服も買えたし、歩きながら街を見学できる
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