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カイセッド
第二章

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「リトアニアは東欧かな」
「ポーランドと仲いいから」
「それでいいんじゃない?」
「じゃあ服はどうかしら」
 ここでだ、イングリットはマルトにこうも尋ねた。その服売り場に勤務している彼に。
「私達の服は」
「文化だね」
「そっちはどうかしら」
「どうだろうな」
 マルトはその問いには首を傾げさせて返した、彼女が淹れたコーヒーを飲みながら。
「それは」
「あら、考えてないの」
「あれだね、カイセッド」
「そう、あれよ」
 まさにそれだとだ、マルトも答えた。
「私達が今着ている洋服じゃなくて」
「民族衣装だね」
「あれはどっちかしら」
「エストニアじゃないかな」 
 服についてはだ、マルトはイングリットに返した。
「それは」
「それは?」
「そう、北欧とかじゃなくて」
「エストニアなの」
「そうじゃないかな」
 こう言うのだった。
「カイセッドについては」
「さっきとは全然違う返事ね」
「そうとしか言い様がないからね」
「だからなの」
「だってリトアニアはリトアニアの民族衣装があって」
 マルトはイングリットに再びリトアニアのことを話した。
「それでフィンランドだってね」
「あっちの方も」
「そう、だからね」
「服はエストニア」
「そうじゃないかな」
「何かあまりどうもね」
 恋人の考えを聞いてだ、イングリットも首を傾げさせた。今は閉店間際で客が少なくその中で話も出来ているのだ。
「納得出来る答えかっていうと」
「違うんだね」
「そうよ」 
 別にというのだ。
「少なくとも私は納得出来ないわ」
「カイセッドがエストニアの服ってことね」
「あまりね」
「そうなんだね」
「そう、特にね」
 こう言ったのだった。
「それだって思えなかったわ」
「そうなんだ」
「まあそれでもね」
「それでも?」
「カイセッドがエストニアのものっていうのなら」
 その考えはというのだ。
「まあそれもね」
「いいっていうんだね」
「それもいいかしらね」
「そうなるんだね」
「そう、あとね」
「あと?」
「私達もう少ししたら結婚するじゃない」
 ここでだ、こうも言ったイングリットだった。
「そうしたらね」
「ああ、タヌだね」
「タヌ被ることになるわね」
「そうだね」
「そのタヌだけれど」
 真剣な顔でだ、イングリットは近い将来夫となる恋人に言った。
「あなたが被せてくれる?」
「僕が?」
「お父さんかお母さんかって考えたけれど」
 そのタヌをだ、自分に被せる相手はというのだ。
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