第十一話 操られし風!あらぶるは雷鳴の獣!
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る。身体に命令する。
だが、動かない。動いてくれない。まるで自分の身体ではないかのように。
そして声がする。
『テメェはそこで、守れなかった人のことを思いながら絶望するんだな』
自分の声であって声でない。それがより一層クウトを焦らせた。
「動けよ!俺の身体だろうが!!動いてくれ!!」
願いは虚しく空間に響く。
響く。
響く。
それから何分、いや何時間だろうか。
クウトはその体勢のまま声を上げていたが、やがて声を止めた。
無駄だと悟ったからだ。誰も聞いていないと悟ったからだ。
彼の眼はもう、絶望していた。
耳に聞こえる幻聴。今まで彼が救えなかった人間達の声。
そして、クウトは立つのを諦め、その場に伏した。
そして、その眼をゆっくり、ゆっくりと閉じようとしーーーー
『諦めるのはダメーーーーーー!!!!』
女の子の声でその精神を覚醒させた。
「何だ……!?」
顔をあげ、光の方に腕を伸ばす。
あともう少し、もう少しで手が届く。
「とど、けぇ!!」
最後の力を振り絞り、声をあげて『それ』に手を伸ばした。
そしてーーーーーー
辺りは白に染まる。
光が収まると、クウトはSAOの姿に戻っていた。しかし、その手には連刃仕様の刀たちが握られている。
「……これは一体。それに、コイツらなんで……」
その疑問を解消する前に、声がクウトを呼ぶ。
「全くー、私を置いていくとかダメなんだから!!」
声の方へ向くと、その人物は姿を現す。
蒼い長い髪に、蒼い瞳。その身体は女性の物で在り、大人のそれと同じだった。
しかし、ただ違うのは身丈以上ある大剣と槍、そしてその背にある蒼い羽のような物だ。
「……アレ?マスターもしかして解らない?」
「……女の子にマスター呼ばわりはされたことはないな」
連刃仕様の刀たちを構え、警戒心を強めるクウト。
しかし、女性は溜め息を付いて言う。
「落ち着いてよ来人。漸く此方に来れたんだから」
その言葉にクウトが固まる。
「来人……だと?」
その名を知っているのは極少数。つまり、現実サイドの知り合いである。
「はぁ……。私だよ、解らない?」
クウトは正直に首を振ると、女性はまたも溜め息を付いた。
「まぁ無理ないか」
大剣と槍を消して、女性は言う。
「カーディナルだよ、来人。正確には、人の心を学び中のモンスターAI『バハムート』の中にいるカーディナル、『フィアナ』だよ!」
「……カーディナル!?」
クウトーーーーーー来人はそれに思い当たる。
モンスターAI。
彼らは世界中の伝承から生み出された、プレイヤー補助のモンスターだ。ティミングを必要としない代わりに、ある特殊な条件と特殊なクエストをクリアしなければならない。
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