第44話
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シュアは口をあけたまま何も言わず、エヴリーヌは首を傾げ、プリネはリフィアに小声で確認した。
「フフフ……。驚きのあまり声も出ないようだな。だが、これで判っただろう。部屋を譲れというそのワケが?」
「ぷっ……」
「はは……」
「キャハ……」
「あはははははは!オジサン、それ面白い!めちゃめちゃ笑えるかも!よりにもよって女王様の甥ですって〜!?」
「あはは、エステル。そんなに笑ったら悪いよ。この人も、場を和ませるために冗談で言ったのかもしれないし。」
「キャハハハ………!」
デュナンは威厳ある声で言ったがエステルやヨシュア、エヴリーヌは笑いを抑えず大声で笑った。
「こ、こ、こやつら……」
デュナンは笑っているエステル達を見て、拳を握って震えた。
「……誠に失礼ながら閣下の仰ることは真実です。」
そこに今までデュナンの後ろに控えていたフィリップがエステル達の前に出て来て答えた。
「え……」
エステル達は笑うのをやめてフィリップを見た。
「これは申し遅れました。わたくし、公爵閣下のお世話をさせて頂いているフィリップと申す者……。閣下がお生まれになった時からお世話をさせて頂いております。」
「は、はあ……」
フィリップの言葉にエステルは状況をよく呑みこめず聞き流していた。
「そのわたくしの名誉に賭けてしかと、保証させて頂きまする。こちらにおわす方はデュナン公爵……。正真正銘、陛下の甥御にあたられます。」
(し、信じられないけど……。そのオジサンはともかく、あの執事さんはホンモノだわ)
(そういえばジャンさんが言ってたね……。ルーアンを視察に来ている王族の人がいるって……)
「ふはは、参ったか!次期国王に定められたこの私に部屋を譲る栄誉をくれてやるのだ。このような機会、滅多にあるものではないぞ!」
小声で会話をし始めたエステルとヨシュアを見て、デュナンは高笑いをしてエステル達に再び命令した。
「ふ、ふざけないでよね!いくら王族だからといってオジサンみたいな横柄な人なんかに……!それにこっちにだって……」
「あいや、お嬢様がた!どうかお待ちくださいませ!」
デュナンに言い返そうとしたエステルにフィリップは駆けつけて大声で制した。
「え?」
「しばしお耳を拝借……」
そしてフィリップはデュナンに聞こえないように壁際までエステルたちを誘導した。
「失礼ながら、お嬢様がたにお願いしたき儀がございます。これで部屋をお譲り頂けませぬか?」
フィリップは懐から札束になったミラを取り出してエステル達に差し出した。
「し、執事さん……」
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