第二部
狩るということ
じゅうよん
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だが……。
そこで、浮かび上がっている立体映像に何となしに目を向けてみれば、私の船のすぐ近くに、赤い点がチカチカと点滅しているのを認める。
「おいおい。幾らなんでも早すぎじゃないですかね」
確信したと言ってもいいだろう。私はその紅点が、彼らからの贈り物だということに何の疑問も抱かなかった。
早速、何があっても良いようにと、私は装備を整えて船を降りる。
紅点の近くに目だった生体反応は認められないが、私に油断や慢心はない。
何故なら、うさぎを狙った横合いから、ライオンが襲い掛かって来ることなど日常茶飯事なのだ。未開の惑星では。
常に神経を研ぎ澄ませ、レーダーに気を配り、光学迷彩で射程範囲まで近寄り、あるいは罠を張って、タイミングを見計らい、確実に、勘づかれる前に一撃のもとに狩る。
それが狩猟というものだと、私は思っている。
もちろん、そう全てが都合良くいく訳ではない。
様々な要因から、白兵戦へ移行するなどということは決して少なくない。
その場合は、相手の虚を突き、弱点を突き、培ってきた技術と経験、そして充実した装備の性能を惜しみ無く引き出し、それを持って素早く狩り取る。
それが私の狩りの仕方であり、戦い方だ。
さて、それでは、受け取りに行きますかね。
―
光学迷彩機能はオフにした私は、目の前にあるそれを瞠目する。
機械。うん、間違いなくこれは機械だ。
私はさらりと凹凸のない表面を撫で、私の星の言語で書かれている文字を読む。
「医療ポット……ね」
人一人がすっぽりと入ることのできる広さの、言わばカプセルのような形状のそれは、上部はガラスのような素材でできており、見た目戦闘機のキャノピーが近いだろうか。
側面にあるパネルを適当に操作してみれば、上部ガラスが真ん中から左右へと別れて収納されることで、人が入れるようになる。
大きさ、そのデザイン。どれを取ってもこの医療ポットが人間用だということが分かる。
我々種族が作るものであれば、もっと大きく、物々しい無骨なデザインであっただろうし、何よりも我々が携帯している医療ボックス一つとっても、鎮痛剤のただの1個も入っていないという蛮族っぷりなのだ。
立体映像をのディスプレイを操作してみれば、局部麻酔から全身麻酔、モルヒネに近い効果がある鎮痛剤まであるではないか。間違いなく、優しさが半分以上ある医療機器であると言えた。
その他にも、出産補助機能や体内のスキャン機能、摘出手術、バイパス手術、縫合はもちろん、なんと四肢再生術まで備えていると、なんでもござれな万能機能を盛沢山に詰め込んだ医療ポットである。
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