第一話 正直左から右って読みづらい
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無数の達磨が私を追って流れ込んでくる。壁から達磨が浮き出し床から達磨が生えてくる。
「・・・っ!な・・・なにこれ・・・っ!」
たったった、と馴れないヒールを履いた足がもつれてきている。
もしかしたら原因はあれかもしれないけど!いまさらどうすればいいの!?問題を間違えた出会う人を間違えた道を間違えた何を間違えた!?
私は達磨から逃げるためにひたすら走り続けた。そして足元に生えた達磨につまずき・・・!
目覚まし時計変わりのスマホのバイブが私を夢の世界から引きずり出す。五月にもなると朝の六時でも外はもう十分に明るくなっている。私は眠気眼のまま掛け布団をゆっくりとどかしてからからベッドに腰かけ、大きくあくびをした。窓の外の屋根から雀の鳴き声が聞こえてくる。窓を思いっきり叩いて驚かせてやろうかとも思ったが寝起きの私は散らかった部屋を見て浅くため息をついてから部屋を出た。
一階に降りると食パンの焦げた臭いが漂ってきて私の鼻を刺激する。頭頂におそらくついているであろう寝癖が歩くたびにピョコピョコと私の頭の神経に存在を呼び掛けてくる。寝癖は今日も元気です。
さて、問いかけます。実はここで私の周りにおかしなことが起きています。さてそれは何でしょう?
一つ、私は一人暮らしなのにパンの焦げたにおいがする。一つ、掃除をしたのは昨日なのに部屋が散らかっている。一つ、昨日はソファで寝ていたのにベッドにいた。これは難問です。懸賞金はいくら?
「あーっ、おはよう。おきたか。」
「・・・お父さん・・・心臓に悪いから帰ってきたなら行ってよ・・・」
「わるいわるい。お母さんだってなんも言わずに帰ってくるだろ?」
もうこの際、私の部屋の散らかしは不問にします。
「・・・それで、今回は、なんのようですか?」
説明が遅れましたが私の家は2LDKの二階建てで、駅から徒歩一時間十分のなかなかな好立地でございます。
「んー、そうそう。」
と、私の父親は新聞から目を外し
「今日、引っ越すわ。」
頭から天窓が開き体が吸い込まれ、空の海へと私の体は投げ出され海宙を舞い横を飛ぶクジラさんに寄り添い鳥さんの泳ぎっぷりに感嘆し雲をかき分け草木を見上げ星を見下ろし・・・っ!
「・・・引っ越し?」
「引っ越し」
「今から?」
「おう。もう荷物送ってるから、あとは体だけだ」
ビッと親指を明後日の方向に向けるお父上。
こうして私は16年付き添った愛すべき町と血涙の別れを果たすのでした。
電車の窓から眺める田んぼたち。そこまで広がってどうするのですか?農家の方は大変じゃありません?
タタンタタンとリズミカルな線路と線路の隙間の音を響かせ、わたしとこの鉄塊は進んでゆくのです。え?お父さん?引っ越すのは私だけです。父は考古学者、母は大学教授。
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