第二部
狩るということ
じゅうさん
[1/5]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
稀に、そこを見ていた筈なのに、全く認識していないことってあると思うんですよね。ふと正気に戻った瞬間、「あれなに?」ってなってしまうことは、一度や二度ではきっとないはず。
いや、本当に、昔を振り返っていたらいまの状況を完全に失念しておりました。
しかし、言い訳をさせて貰えれば、非常に大切なことを思い出すことができたのは僥倖だったと言える。
で、あるならば、さっさと目の前の面白生物を片付けてしまおう。
スマホのアラームかと思うほどに体を震わせている女騎士、エリステイン。それを隠すように私は一歩前に出て、彼女と面白生物双方の視界を遮る。
走ったことにより息が上がった訳ではないであろう、明らかに興奮を隠しきれない面白生物は鼻息荒く、ギョロついた目でこちらを睨めつける。
それは、一番のご馳走を隠されたことによる怒りだろうか。それとも、獲物を探し当てたことによる歓喜か。
どちらにせよ、私のやることに変わりはない。
女騎士に取り繕う余裕を与えず、目に見えて怯えさせることのできる生物だ。それはいったい、どれほどの脅威であるのか。いったい、どれほどの獲物を喰らってきたのだろうか。
「だ、だめです。逃げましょう」
先ずもって、この面白生物の走る速度から、無事に逃げ仰せることは不可能だろう。正確に言えば、私は問題なく、この面白生物を撒くことは可能だ。
しかし、彼女は間違いなく不可能だ。私が小脇に抱えていれば問題ないだろうが、そんな七面倒なことをする位であれば、この場で決着をつけた方が効率的というものだ。
なので、私は彼女へ応える代わりに喉を鳴らす。
たまには少し本気になったところで、バチは当たるまい。
涎を滴らせるそのだらしない口を開け、面白生物は吼える。
それが合図だった。
私は、腰の右ホルスターからシュリケンを抜き取り、早打ちガンマンの如く投げつける。
空中で6枚のブレードが一瞬の内に展開されると、金属特有の高く、小気味良い音と空気を切り裂く音とが混ざり合う。
成人前の同族ですら、厚さ10センチ以上もある鉄の扉を凹ませる、硬質な硬い肉の頭部を切り裂き、投げ付ければ石壁に突き刺さるほどの鋭さと威力を出せるのだ。
では、成人の儀を無事終え、数々の星を渡り歩いて狩猟を行い、なんだかよく分からない内に勇者とかなんとか呼ばれた、平均よりも大分体格の良い私が行えばどうなるか。
答えはすぐに出た。
面白生物は抵抗を見せるどころか、身じろぎひとつ、ただの一瞬も反応すること叶わずに、首から上が宙を舞う結果になった。
だめ押しとばかりに、だらしなく舌を投げ出している、無様に舞う頭部をロックオン。
私の左肩か
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ