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六つの百合の華
再会
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私は見慣れた光景に思わずため息をつく。
 茅王は親しい仲以外の人間には警戒して頑なに口を開こうとしない。
 威嚇ともいえるこの行動は中学生のときから今も変わっていなかった。
 安心したというか、心配というか……。私は複雑な気持ちになった。
「チノン、このままでいいの?」
「うん……どうせ直んないし、そんなことより"うちのチノン"ってどういう事
 ー?」
 私はそう聞かれて頬の辺りが熱くなっていくのを感じた。
 茅王は分かりきった笑顔で迫ってくる、なめられてる様で正直に答えたくは無
 かった。
「んー?ほっぺ真っ赤っ赤だよー?」
「な……なによ、その顔は?それにほっぺた突くな!何て答えてほしい訳?」
「えっへへ、分かってるくせにー」
「し、知らないよ!それに私、急いでるからまた後でね!」
「んあ、ちょっと!」
 茅王と話してるとキリがないので、私は話を切り上げて学校へと走った。
 靴箱に靴を入れ、中央廊下を早歩きし、四階にある教室へと急ぐ。
 教室のドアに手をかけ、息を整えるために大きく深呼吸をする。
 ドアを開け教室に入り、すぐ考え事の続きをする、俯きながら歩いていると、
 ふと自分の机に目がいった。
 机の"それ"を見るなり、私の考え事は解決した。
 そこにいたのは綺麗なロングの金髪に、整った顔。教室の窓から吹く春風に金
 髪が揺られ、花畑にいる貴族と言われても納得してしまう、そんな絵に描いた
 ような美少女。
 だが、そんな美しい見た目とは裏腹に足組みをして座り、カッターシャツのボ
 タンは胸元ギリギリまで空いている。非常にだらしのない格好だ。
 私とは一見無縁に見えるその女の子にはどこか見覚えがあった。
「可……憐……?」
「…………ん?美鈴?美鈴!久しぶりー!元気だった?昨日の手紙読んでくれ
 た?怪我とかない?学校生活うまくやってる?今度美鈴んちに遊びに行ってい
 い?」
 声をかけた途端、餌を見た犬のように目を輝かせながらマシンガントークを展
 開してきた。急に喋って疲れたのか、可憐は息を切らしている。
「だ、大丈夫?でもなんでここに?」
 その瞬間、私が喋るのを待ってたかのように放送が流れてきた。
 『花山可憐さん、至急職員室に来てください。繰り返します……』
「うあ……やっぱ呼ばれちゃった」
「なんか悪いことしたの?」
「転校初日で悪いことするって不良じゃあるまいし……」
 可憐は呆れ顔でそう言った。
「それじゃあ、行ってくるね!」
「うん………………え?」
 少しの沈黙の後、私はハッとした。
 "転校初日"可憐は確かにそう言って去って行った。
 つまり、可憐がこの学校に転校してきたって事だ。
 え?と私は心の中で改めて驚く。
 "明日会えるといいね"
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