4部分:第四章
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が最初に来た。イカ墨のスパゲティ、ネーロである。
「イカ墨のスパゲティですね」
「はい、当店の自慢のメニューです」
ボーイはにこやかにおばさんにそう答える。
「チーズもありますので」
「それでは」
「はい」
おばさんはチーズをふりかけて食べはじめた。黒いパスタが蒔絵と裕行の服の色と重なって見えた。彼女はそれを見てあることを思いついた。
(そうだ)
これなら間違いないと思った。すぐ行動に出る。
裕行も。何と二人は同時に行動に出たのだ。
パスタを派手に音を立てて食べる。言うまでもなくマナー違反だ。だが二人はそれをあえてやったのだ。
「ちょ、ちょっと」
「裕行さん」
おばさんもあちらの御母堂もそれを見て慌てて声をかける。
「スパゲティはそんな食べ方じゃ」
「わかっているでしょう?」
「これが今の流行なのよ」
蒔絵はまた嘘をついた。
「お母様、今はこうして食べないと駄目なのですよ」
(!?)
蒔絵は裕行も同じ内容のことを言ったのでふと彼の方を見た。
(どういうこと!?)
見れば彼も同じであった。目だけギョッとして彼女の方を見ていた。
(同じことをするなんて)
当然流行とかそういうのは嘘っぱちである。こんなことが流行っている筈がない。だが彼女はお見合いをぶち壊す為にあえてしているのである。そして彼女と同じことをどういうわけか向こうもやっているのだ。
「そうなの」
「そうよ」
蒔絵は得意満面に嘘をつく。
「そうなんですよ」
向こうも。テーブルを挟んで全く同じ光景が繰り広げられていた。
「スパゲティを静かに食べるのはもう古いって言われてるんですよ」
「そうなのよ」
奇妙なことだが蒔絵は裕行の言葉に相槌を打っていた。
「ですからこれはいいのです」
「イタリア料理だから気取らなくていいじゃない。そうでしょ?」
「それもそうね」
二人が一緒に言うのなら間違いないと思ったのだろうか。おばさんもあちらの御母堂もそれに頷いた。
「じゃあまた食べましょう」
「丁度サラダが来たし」
パスタを食べ終わった後にサラダ、魚、そして肉と続く。二人はここでもかなり無作法に食べた。だがそれも今はこれが流行りだとかイタリア料理だから気取らなくていいとか適当な嘘を言って潜り抜けた。
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