2部分:第二章
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う。我ながら芝居がかっていると思った。
「絶対に潰してやるんだから」
ニヤリと不敵な笑みを浮かべる。それは確かにお見合いに向かう顔ではなかった。言うならばリングに入ろうとする女子プロレスラーの顔であった。
駅に着く。おばさんはもう着飾って待っていた。
「おばさん」
「あら、早いわね」
おばさんは蒔絵の声を聞いて笑顔を彼女に向ける。だがその笑顔は一瞬で崩れ去ってしまった。
「な・・・・・・」
顔がハンマーで割られた鏡の様になった。今自分が見ているものが信じられないといった顔であった。
「ちょっと蒔絵ちゃん」
「?どうしたの?」
蒔絵はわざと何でもないといった顔を作ってみせた。
「何驚いてるのよ、おばさん」
「何がっていうのじゃないわよ」
おばさんはその割れた顔のまま蒔絵に対して言う。聞けばその声も割れてしまっていた。
「あのね」
「うん」
「貴女、その格好でお見合いに行くつもりなの!?」
「そうだけど」
蒔絵はおかしそうに笑って言葉を返す。
「お見合いでしょ。だからお洒落して来たのよ」
「おしゃれはいいわよ」
おばさんは困った顔でそう返す。
「それはね。けれど」
「けれど。何?」
わざととぼけている。だが動転しているおばさんはそれに気付かない。思えば罪な悪事だ。
「幾ら何でも。場違いよ」
「そうかなあ」
またわざととぼけてみせる。しかしおばさんはやはりと言うべきかそれに気付かない。あまりにも動転しっぱなしだから。
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