1部分:第一章
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」
とりあえずケーキを口に入れる。
「だってねえ、これからすぐ歳とっちゃうのよ」
「うん」
モンブランの甘みも何処へやら。味気ないものとなっていた。
「それ考えるともう身を固めておいた方がいいわよ」
「けれど今は」
話の勢いが止まったところでとりあえず反撃を言ってみた。
「あまり」
「もう一年も彼氏いないんでしょ?」
「まあそうだけど」
流石に耳が早い。それを知っているから見合いの話を持って来たのだろうが見事な早さだった。
「まあ一度会ってみなさいって。悪い人じゃないし」
「悪い人じゃないの?」
ここで蒔絵は迂闊な一言を言ってしまった。これを言ったらもう相手のペースにはまっていくばかりだというのに。迂闊な一言であった。
「だって私が見たんだもの」
おばさんはその巨乳というよりは単に太っているだけの胸を大きく前に突き出して答えた。蒔絵はその胸を見て自分もそのうちこうなってしまうのだろうかと心配になった。
「間違いないわよ」
「そうなの」
「そうよ。まあ大学はそこそこだけどね」
「ええ」
今度は身を乗り出してきた。蒔絵も知らず知らずのうちに身を乗り出してしまっていた。
「背も高くてね」
「ふんふん」
実は彼女は背の高いのがタイプなのだ。自分の背は大人の女としては普通だが付き合う相手には背を求めてしまうのだ。といっても自分より高ければそれでいいという感じなのだが。
「男前なのよ。写真見る?」
「まあ見るだけなら」
乗り気なのを隠して言う。
「見てみようかな」
「わかったわ、それじゃ」
おばさんはそれを受けて写真を出してきた。
「この人なんだけど」
「この人?」
「そうよ。学生時代はサッカーをやってたらしくて」
「サッカー」
彼女は野球とサッカー両方好きである。野球はロッテ、サッカーは柏だ。特に千葉に思い入れがあるというわけではないがこの二つのチームが好きなのだ。
「今でもスポーツが好きでスラッとしててね」
「それでどんな人なの?」
またむざむざとおばさんの術中に入ってしまっていた。
「見たい?」
「ええ」
おばさんはその言葉を聞いて心の中で会心の笑みを浮かべた。
「じゃあお見合いする?」
「その前に写真見せてよ」
「駄目よ、お見合いしないのなら見る必要ないでしょ」
「ここまで話引っ張ってそれはないじゃない」
口を尖らせて不平を述べる。
「意地悪」
「知らなかったの?私は意地悪なのよ」
居直ってきた。
「見たければお見合いする。どう?」
「つまり結婚しろってことなの?」
「そんなことまで言ってないでしょ。とにかくどうするの?」
言ってはいるが何時の間にかはぐらかしていた。そのうえでまた問う。
「お見合いするの?しないの?」
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