3部分:第三章
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第三章
「パンダなんですよね」
「はい、パンダですよ」
「何度も申し上げますが」
「パンダでどうして」
話がどうしてもわからず首を傾げさせるばかりであった。
「こんな姿に」
「気をつけて下さいね」
「くれぐれも」
こうしてパンダの前に来てそして笹をやろうとする。しかしであった。
パンダは智仁を見据えてきた。そのうえでだった。
「えっ、パンダって」
智仁はパンダを近くで見てはじめて気付いた。
「でかいですね」
「そうですよ。ジャイアントパンダですから」
「大きいですよ」
「大きいししかも」
それだけではなかった。
「身体もごついですね」
「はい、そうです」
「ですからジャイアントパンダですよ」
「熊並はあるな」
智仁はそのパンダを見てあらためて気付いた。まさに熊と同じだけの大きさと体重はありそうだった。かなりの威圧感さえ放っている。
「これはまさか」
そしてそのパンダがであった。
「グルルルルル・・・・・・」
まずは一匹が唸ってきた。そしてさらにだ。
他のパンダ達も唸ってきた。四足になりそのうえで智仁を睨んできたのである。そしてその牙や爪を見せてもきたのである。
「熊ですか?」
「はい、熊です」
「パンダは熊です」
ここでまた言う係の人達であった。
「パンダは中国では大熊猫といいます」
「ですから」
「熊ですか」
係の人の言葉を聞いて呟く智仁だった。
「そうだったんですか」
「では笹をあげて下さい」
今度はテレビ局の人が言ってきた。
「お仕事ですのね」
「はい、それでは」
テレビ局の人の言葉に素直に頷きはした。そのうえで手に持っている笹をやろうとする。しかしここでそのパンダのうちの一匹が。
「ガアッ!」
「来たっ!?」
襲い掛かって来たのだ。その左の前足を横薙ぎにしてきたのだ。その前足には鋭い爪まであった。その爪から禍々しい光まで放っている。
「まずい!」
咄嗟に身体を屈めさせてそれをかわした。まさに一瞬のことだった。
「今のを受けていたら」
どうなるかは最早言うまでもなかった。
「冗談じゃないぞ、これは」
そしてだ。彼はここで判断を下した。
笹を投げたのだ。するとパンダ達はその笹に群がり彼から離れた。
これで何とか助かった。だが智仁は全身から冷や汗をかいていた。
「死ぬところでしたよ」
「これでおわかりですね」
「その姿にしてもらった理由は」
またしても言う係の人達だった。
「パンダは猛獣なのです」
「だからだったのです」
「猛獣だったんですか」
それをようやく思い知った智仁だった。
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