第3章 リーザス陥落
第87話 最終局面へ
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――例え戦闘中であったとしても。
――例え目の前に相手が迫っていたとしても、……それが、愛する者の仇であったとしても。
例外なく、等しく目を奪われ思わず動きを止め、魅入ってしまう。
そんな光景は珍しいことではない。
1つ、例を挙げるとするならば、《天災地変》
戦いの最中に、自然界に起こりえる様々な災いが起きれば、それはもう戦闘どころではなくなるだろう。
暴風が吹き荒れ、大地の脈動が地割れを呼び、空は暗黒に染まり、神成る鉄槌、雷撃を迸らせる。
それらの災い。その内の1つでも 起きれば、人は冷静じゃいられなくなる。あまりに、強大すぎる何かを見てしまえば、言葉を失ってしまう。ほんの数秒で、己の生命が失うかもしれない厄災を前にしても、動くのも忘れ、言葉も忘れる。……死するその瞬間まで。
上記のこれは、極めて特例である。
だが……、その特例が、いや 天災よりも遥かに稀、稀有とも言える現象が起きたのだ。
それは、相対する2つの影の戦い。
離れたかと思えば、一瞬にして距離を0にして激突。
一度接触すれば、轟音と共に、衝撃波を生む。空気が弾けて震え……、いや 大気そのものが震え続けた。
それは、凡そ人の業と呼べる様なものではなかった。それはまさに、積み重ね続けた、研磨され続けた強さの結晶が、眼前に広がっているのだ。
例外なく、軍人と言う者は《強さ》に憧れるものである。その最高とも呼べる者の戦いが眼前で繰り広げられ続けている。ヘルマン軍に至っては、己らが最高だと湛えている将軍と正面からやりあっている男の存在に、言葉も出なかった。
戦闘を平然と眺める様な真似は、今回が初めてだろう。だから、両方の強さを事前より知っているリーザス解放軍も同様だった。
後退の意思を、撤退の二文字の全てを捨てたヘルマン軍。
負けられない想いの強さは変わらず、故郷を、国を取り戻す為に戦い続けるリーザス解放軍。
その2つの勢力、その全員が例外なく 戦闘を止めたのだ。
怒号の一つも無ければ、鍔迫り合い等の金属音さえもない。
戦場に響くのは、強大な2つのぶつかり合いのみである。
2つのぶつかり合い。
男と男のぶつかり合いを見続け、見守り続けながら、男は、いや、男達は ちんっ と言う音を立てながら、己の得物を鞘へと収めた。
「……お前、敵前で、正気か?」
表情を変えずそう言うのは ガイヤスだった。
武器を完全に収めた男達、と言うのは、彼ら。ガイヤスとサレの2人と激闘を繰り広げていたリックと清十郎である。
加えて、2人は敵の方を見ること無く、ただただ あの2人の戦いを見ていた。
「……ア
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