第3章 リーザス陥落
第87話 最終局面へ
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を知らしめる為に。―――その、つもりだった」
トーマは告白をし、戦鎚を下へとおろした。
「……全てを放棄。か。……儂が、皇子を止める事ができたと言うのに、止められなかった。事を起こしたのは、決して皇子だけではない。……儂自身も、十分すぎる程に、関与していると言うのに。…………主の言う通りだ」
武人として、男として、……いや 人間として、間違った行動を取ってしまった。
トーマ自身も、その事を意識の深層域で重々思い知っていたのだろう。……それが、最後の戦と銘打って討って出たこの場で顕著に現れてしまった様だった。迷いは力を鈍らせる。それはやはり間違いない事だろう。それを自らで体現し、実演をしてしまったのだから。
「『諦めている』か。目をそらし続けた事で、儂は、諦めてしまっていた様だ。――皇子を見ると言う事を、ヘルマンの未来を、見ると言う事を。『皇子の目を覚ます』『次に託す』と言い訳を重ねながら………。ふははっ……、それは、歳を理由に誤魔化していたのかもしれん、な……」
トーマは、ゆっくりと眼を開いた。
――……その目は、先程のものとは全く違って見えた。
恐らく、いや間違いない。
国を超えて、各国の兵士達が人類最強だと称した男のもの。目に力が戻ってくるかの様に、その黒い瞳の色の中に、炎が見えた気がした。
「……諦めるのには、まだ早い、か」
「ああ」
「まだ、すべき事は残っている。――目をそらし続けるわけにも。……死に、逃げるわけにもいかん、か」
「……ああ」
尋常ではない圧力を、ユーリは全身に浴びていた。
それを全身に受けながら、ユーリもポツリと呟く。
「もう――残念などと、……その程度なのか? などとは言えないな。……覚醒、と言った所か」
額に流れる自身の汗を感じながら、ユーリは前言を撤回していた。
そこで、声が聞こえてくる。
「……このまま一騎打ちでは、まずいかも知れないな? ユーリ。お前は、……とんでもないものを、起こしてしまったかもしれんぞ」
清十郎だった。
トーマの姿が、先程のものとは比べ物にならない程の気迫をまとった姿になった為、ユーリにそう言っていたのだ。自他ともに求める戦闘狂である清十郎も、そう言ってしまうまでのレベルだと言う事だ。
そして、傍に来ていたのは清十郎だけじゃない。
「……です、ね。あれこそが、我々の知る。……いや、恐れる 黒鉄の重騎士。―――……人類最強の男」
リックも、同様だった。
これまでに相対してきたどの敵よりも、重厚な気迫を感じるからだ。無論、魔人は除くが、決して見遅れなどはしない程だ。
緊迫した空気の中、2人だけが ここまで接近する事が出来ていたのだ。
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