第二百五十三話 最後の合戦その九
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「ここはな」
「そうですか、では有り難く手柄を貰い」
そのうえでとだ、彼は応えてだった。
己の乗る舟を進ませた、彼はその時に言った。
「その手柄でねねと子を喜ばせようぞ」
「はい、では参りましょう」
その彼に今も共にいる秀長が応えた。
「是非」
「うむ、そうじゃな」
「権六殿達が花を持たせてくれたのです」
「わしはいつもそうじゃな」
ここでだ、羽柴はこうも言った。
「誰かにな」
「花をですか」
「持たせてもらっておる」
こう言うのだった。
「幸いな」
「それはどうも」
「違うというか」
「はい、兄上にしましても」
その資質があってというのだ。
「ことを果たされていますが」
「そうであればよいがな」
「はい、ですから」
「そう考えることはか」
「ないと思います」
「左様か」
「むしろです」
「むしろ?」
「兄上はご自身の資質の中にです」
こう兄に言うのだった。
「人を惹き付ける」
「そうしたものがあるか」
「ですから」
それで、というのだ。
「助けてももらえるのです」
「有り難い資質じゃな」
「それがしはそう思います」
「そうか」
「では兄上」
秀長は兄にあらためて言った。
「先に進みましょうぞ」
「ではな」
「それまで脇はそれがしが固めます」
「叔父上、それがしもです」
甥の秀次もいた。
「及ばずながら」
「おお、御主か」
「はい、叔父上の為に」
「有り難い、御主までいてくれればな」
その甥にもだ、羽柴は顔を綻ばせて言った。
「二百人力じゃ」
「二百人ですか」
「小竹が百人でな」
そしてというのだ。
「御主も百人でじゃ」
「合わせてですか」
「そうじゃ、二百人じゃ」
こう言うのだった。
「二人でな」
「成程、では我等二人で」
「頼むぞ」
その陽気な笑顔での言葉だ、戦の場であるがそれでもその笑顔は妙に人懐っこく見た者を惹き寄せずにはいられない。
「これからな」
「では」
「我等二人で」
「いやいや、三人じゃ」
今度はこう言うのだった。
「我等三人で行き。そして」
「そして?」
「そしてとは」
「三人で安土まで帰ってな」
戦に勝ち、そしてというのだ。
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