第二百五十三話 最後の合戦その七
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「逃げるぞ」
「陸にもまだいますが」
「あの者達の目を晦まし」
「そのうえで身を潜め」
「傷を癒しますか」
「我等は生きる」
必ずという言葉だった。
「生きてさらにじゃ」
「闇に潜み闇で蠢く」
「そうしていきますな」
「その通りじゃ、ここは降りかかる火の粉を払い」
そしてと言うのだった。
「逃げるのじゃ」
「では」
「その様に」
棟梁達も頷いた、最早傀儡は殆ど残っておらず魔界衆の者も数える程しか残っていない。だがそれでもだった。
彼等は立っていてだ、そしてだった。
最後の戦いを挑もうとしていた、しかしそれは滅びる為ではなく。
逃げる為だった、その為に戦おうとしていた。
その彼等を見てだ、信長は言った。
「生きようとしておるな」
「はい」
供をする蘭丸が答えた。
「まさに」
「この状況でもな」
「恐ろしい執念です」
「全ては害を為す為か」
「そうとしか」
「そうじゃな、あの者達にあるのはな」
「怨念ですな」
蘭丸は眉を曇らせて言った。
「それしかありませぬ」
「それ以外はなく、な」
「若しここで生き残ると」
「はい、また天下を乱そうとしますな」
「それは許してはおけぬ」
必ずとだ、信長は言った。そしてだった。
蘭丸にだ、彼は強い声で告げた。
「よいか、わしはじゃ」
「その怨念を完全に消す為にも」
「あの者達を滅ぼしな」
「特にあの老人を」
「この手で倒す」
こう誓うのだった。
「よいな」
「さすればその一騎打ちの時まで」
蘭丸は既に刀を抜いている、ここでも毛利と服部は信長を護っている。そして彼も刀を抜いて言うのであった。
「お任せ下さい」
「上様、例えどの様な者がいようとも」
「我等がいます」
その毛利と服部も言う。
「ですからここは」
「あの老人の前まで向かいましょうぞ」
「頼むぞ。軍勢はな」
信長を護る軍勢、彼等はというと。
森と池田がだ、それぞれ舟に乗り率いていた。彼等はここでも信長をそのうえで護っていた。そしてだった。
明智がだ、彼が乗る舟から信長に言って来た。
「上様、ここは」
「御主もじゃな」
「棟梁の一人を討って宜しいでしょうか」
「その言葉待っておった」
信長は明智に笑って返した。
「では行くがいい」
「それでは」
「一人倒せ」
魔界衆の棟梁のうちのというのだ。
「よいな」
「わかりました」
「ではな」
こう返してだ、そしてだった。
信長自身も最後の戦に向かう、今も彼を憎悪に満ちた赤い目で睨む老人の前に。その槍を手にして行くのだった。
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