巻ノ三十九 天下人の耳その三
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「それがしかと」
「そうであろうな」
「関白様はそれがしを家臣にしたいです」
「その為に我等を呼ぶか」
「そして源四郎殿も」
幸村もというのだ。
「ですから」
「ではどうすべきか」
「それがしの考えは変わりませぬ」
兼続は確かな声でだ、景勝に答えた。
「誓って」
「御主は他の家には行かぬ」
景勝自身も言った、それも強く。
「決してな」
「その通りです」
「だから御主を関白様の前に連れて行く」
絶対にというのだった。
「そして話すのじゃ」
「それがしの口から」
「そうせよ」
「わかりました」
「そして源四郎殿もまた」
兼続は彼のことも話した。
「心配無用」
「あの方は真田家から離れず」
「それにじゃ」
さらにというのだ。
「あの御仁は禄や銭、宝では動かぬ」
「義ですな」
「義のないところに動かぬ」
決してという口調での言葉だった。
「だからな」
「それがしも源四郎殿もですか」
「共に連れていく」
「都に」
「そして大坂にもな」
即ち秀吉の前にというのだ。
「上洛するぞ」
「畏まりました」
「源四郎殿にも伝えるとしよう」
この話をというのだ、こう話してだった。
「このことはな」
「ではそれがしから」
「頼んだ」
口数少なくだ、景勝は兼続に告げた。そしてだった。
幸村は己の屋敷に来た兼続からその話を聞いてだ、まずはだった。
驚いた声でだ、兼続に問い返した。
「それがしがですか」
「はい、殿と共にです」
「直江殿もご一緒で」
「上洛してです」
そのうえでというのだ。
「関白殿下にお会いすることになりました」
「関白様ご自身がですか」
「そう言われています」
「何と」
その話を聴き終えてだ、幸村は言った。
「信じられませぬ」
「しかしです」
「関白様がそう仰るのなら」
「是非です」
幸村もというのだ。
「ご一緒に」
「では」
「それでは我等もですか」
「殿と共に」
十勇士達もここで兼続に問うた、彼等は今も主と共にいるのだ。
「都、そして大坂にですか」
「上洛ですか」
「無論です」
兼続は彼等にも答えた。
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