巻ノ三十九 天下人の耳その二
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「だからな」
「あの娘をですな」
「源四郎の嫁にやるか」
「そうされますか」
「桂松は天下の柱となる者じゃ」
秀吉はそう見ているのだ、吉継は石田三成と共に将来羽柴家の天下を支えるだけの者であるとだ。
「その娘をな」
「源四郎にやりますか」
「そうしよう、一度あ奴を見てな」
「そのうえで」
「決めようぞ」
「では一度」
「この目で源四郎を見たいが」
「それではです」
そう聞いてだ、秀長は兄にすぐに言った。
「それがしに考えがありますが」
「上杉家をじゃな」
「この大坂か都に呼び」
「その時にじゃな」
「源四郎も連れて来る様にとです」
「言うのじゃな」
「そうしましょうぞ」
これが秀長の考えだった。
「是非」
「うむ、ではな」
「その様に」
「どのみち上杉家のな」
「お二人にはですな」
景勝と兼続のことだ。
「兄上は」
「欲しいと思っておる」
愛嬌のある笑みでの言葉だった。
「家臣にな」
「兄上はやはり」
「欲が深いか」
「はい、人については」
「ははは、さっきも言ったがわしは欲が強く深い」
「人を集めることについては」
「おなごも好きじゃが男もじゃ」
家臣としてだ、秀吉は衆道には興味がないのでそうしたことで男を求めることはない。しかし人を集めることについてはなのだ。
「好きだからのう」
「それで、ですな」
「うむ、それでじゃ」
実際にというのだ。
「あの二人も欲しい」
「特に直江殿を」
「羽柴家に加えたいのう」
「だからこそですな」
「声をかける為にもな」
「呼ばれますな」
「そうするとしよう」
こう話してだ、そしてだった。
秀吉は上杉家に人をやることにした、その言うことはもう決まっていた。
その話を聞いてだ、景勝はすぐに自分のところに兼続を呼んで問うた。
「どう思うか」
「はい、今回のお呼び出しはです」
兼続は景勝に畏まって答えた。
「殿とそれがし、それにです」
「源四郎殿をじゃな」
「羽柴家に入れられたいのでしょう」
「やはりそうか」
「関白様はとかく人を集めたがります」
「家臣としてな」
「多くの家から家臣を引き抜いています」
「石川殿だな」
石川数正のことをだ、景勝は言った。
「あの御仁もな」
「はい、他の方もです」
「他の家から人を抜き家臣を増やし」
「同時にその家の力を奪います」
「まさに一石二鳥」
「それが為にです」
まさにというのだ。
「殿もそれがしもです」
「そして源四郎殿も」
「特にです」
兼続は景勝に強い声で話した。
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