第二部
狩るということ
じゅうに
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どうしました?」
私が彼女へと視線を戻すと、若干の警戒感をその瞳に表しながら首を傾げる。
さて、そのままの特徴を彼女に伝えるかと、視線切って森の奥へと戻してヤツを見れば、こちらの方角へ鼻を向け、先ほどよりも強く、特徴的な鼻を鳴らして、明らかにこちらの存在を認識しているということが分かる。
と、ヤツは一度動きをピタリと止めた。途端、駆け出す。
――はやっ!
見た目での判断を戒めたばかりではあるが、想像以上のスピードとその加速力に私は目を見開く。いったいどれ程のエネルギーを持って大地を蹴り抜いたのか。
更に、そのスピードを出しているだけの激しい動作により、口の端から涎が吹き出しているのを認め、かなり飢えているということに気付く。
「敵だ」
私は一言、ヤツから視線を外すことなく言い放つ。
「敵……ですか?」
彼女は自分の探知能力にそれなりの自信があるのだろう。半信半疑な様子で聞き返し、森の奥を凝視する。
前回、豚面鬼との接敵前から考えるに、彼女の感知できる範囲にヤツが踏み込んで来るのはそう遠くないが、その前にヤツが大きく口を開けて咆哮する。
その風体に似つかわしくない、それこそ馬のような甲高い嘶きに、なんだか下手なコメディーショーを観せられた気分になってしまう。
いけないと思いつつも脱力してしまう私は、いまの声は聞こえていたであろう彼女へと視線をやり、その様子の変わりように唖然とする。
女騎士は明らかに怯えていた。
目を見開き、半開きにされた口から覗く歯はガチガチと噛み合っていない。
それが体全体へと波紋のように広がっていくのに時間は掛からなかった。
豚面鬼3匹を全く寄せ付けることなく、一撃のもとに討ち取った彼女が怯えているのである。それほどまでに、あのバカらしい鳴き声と風貌を持つ魔物は強敵なのだろうか。
「豚面鬼3匹を軽々と屠った貴様が怯えるほどか?」
「豚面鬼などとは全く比較になりません! あれは森のもっと奥、それこそ最深部近くを縄張りとしている存在です」
私は疑問に思ったことをそのまま伝えると、彼女は視線を森に固定したまま、叫ぶように応える。
やはり、奥に行けば行くほどに、そこに住まう生き物の脅威度は上がっていくようだ。
私は軽くそのことについて説明を求めると、彼女は唾を飲み込み、震える声で話してくれた。
「前にお話しした通り、この森の最深部には、私の家名の元となっている、リンドワームというドラゴンが住んでいると言われています。まず、その最深部にはリンドワームしか生息していません。そして、それを囲むように、最深部近くには、混沌獣と呼ばれる、『魔物の向こう側』、と
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