第一話 小さな町の売れない技師
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限過ぎてんだけど!?」
ビシッとライドの店舗……もとい、物置小屋を指さしながら怒鳴る少女にライドは困ったように頭を掻く。
「そうは言いましても、今日の食事にもありつけない状況でして。お金がなければ家賃だって払えないでしょう?」
「なら! 直ぐにでも出て行きなさいよ!!」
ライドの切実な訴えにも少女はどこ吹く風で金切り声を上げる。
正直、どうして大家さん本人ではなく娘のネリイがここまでヒステリックになるのかと事情を知らない人が見たならば思うだろうが、これにはライドがこの町に住み始めた経緯に理由があった。
ライドがこの町に来たばかりの頃、殆ど無一文だったライドは行き倒れ寸前の状態だった。
それを介抱し、助けてくれたのがネリイだった。
この頃のネリイはとても優しい少女で、ライドの語る旅の話をとても嬉しそうに聞いていたものだった。
しかし、無駄飯ぐらいをいつまでも置いて置けるほどこの町の住人は裕福ではない。
その状況に居心地の悪さを感じたライドが何か飯の種でもあればと、付近の森に探索に出た時に偶々発見したのが魔石の鉱脈だった。
そこで見つけた魔石を使用した魔道具を売り収入を得たライドは、これまでの宿泊代とこれからの住まいの提供を願い出た。
ライドにとって手つかずの鉱脈を発見した事で、この町を拠点として生活しようと決めたからだった。
しかし、一時的なら文句を言わなかったネリイの両親も、今後ずっととなると流石に首を縦には振ってくれなかった。
そんな時にネリイが提案したのが当時は全く使用しておらず、廃墟と化した庭の片隅にあった物置小屋の貸出だった。
とにかく雨風凌げればそれでいいというライドは納得したものの、ネリイの両親はそれでも困った顔をした。
そんな両親を説得したネリイの案が、今後の自分のお小遣いと食費はライドからの家賃で全て賄う……というものだったのだ。
つまり、
「あんたのせいで私もう3日も何も食べてないのよ!? あんたさえ居なくなれば直ぐにでも家で食べられるから! さあ、出てけ!」
「いやいや、3日位なんですか。以前二人で身を寄せ合って木の皮を齧りながら一週間耐えた時に比べたら……」
「人のトラウマを平然と口にしないでよ!!」
ライドの発言に折角の可憐な顔を歪めて詰め寄る赤毛の少女だったが、直ぐに力なくライドの足元に座り込む。
「……駄目。お腹すいて力でない……」
自らの足元で座り込む少女の顔は俯いている事で見る事は出来なかったが、力無く垂れた左右の髪と、心なしか小さくなったように感じる体にライドの心に罪悪感が湧き出てくる。
思えば、この町に転がり込んでからもう1年以上この少女とは顔を合わせてきたのだ。
今回のような事も1度や
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