第一話 小さな町の売れない技師
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の一つで、これがなければそもそも魔道具を作り出すことが出来ない。
しかも、魔石というものは一つ一つ込められた魔法が違うため、魔石を手に入れたらまずどんな魔法が込められているか確認し、そこからようやく『その魔石に適した道具』を制作する事が出来るのだ。
しかしながら、大きな力を宿す程に魔石は高額で取引されるため、ライドのような力も金も持ち合わせていない人間にはなかなか手に入れる事が出来る物では無かった。
その為、これまでライドは安い魔石を業者から購入し、無難で安価な魔道具を制作、販売しながら行商をしてきたわけだが、幸運にも海を渡ってすぐのカンタールの近くの崖で魔石の鉱脈を発見して今に至る……という訳であった。
最も、
「見つかるのが在り来たりだったり、使用用途がわからない魔石ばかりじゃなぁ……」
起き上り、先程まで腹の上にあった自信作を手にとって深い溜息を吐くライド。
正直、“聖水”の魔石を手に入れて、『ライド式浄水器』を完成させた時はとんでもない物を作ってやったという実感があった。
ライドの腕では魔石に水分が触れる前に異物を除去させる装置を組み込む事は出来なかったが、これさえあれば世界中を旅する冒険者に高く売れるだろう。
しかし、蓋を開けてみれば自分自身の考えの浅はかさを痛感する事となる。
戦士に突っ込まれるまで気がつかなかったが、そもそも、水のない場所でどうやって原料の水を手に入れる事ができるのか……という話だった。
ライドは落胆した様子で、しばらく座り込んでいたが、やがて立ち上がると出かける準備を始める。
どうせもう客は来ないだろうし、商売道具である魔石の採掘に行かなければいけないからだ。
ライドは壁に掛けてあったザックに手にしていた浄水器を放り込み、壁からザックと外套を外して身に付ける。
支度を終えて振り返ったライドの目に入ったのはひっくり返った机と埃まみれの床だったが、掃除と片付けは帰ってからする事に決めると外に出る。
扉の外は真夏の日差しが容赦なく照り付ける世界だった。
「ライド!」
自宅を出てしばらく歩いた所で後方から掛けられた声に反応してライドは振り向く。
振り向いた先にいたのはライドと同年代であろう少女で、丁度ライドに向かって走り寄ってくる所だった。
「これはこれは。大家さんのご息女のネリイさんじゃないですか。ひょっとして何かご入り用ですか?」
ライドは少女が足を止めるまで待つと、商売用の笑顔を張り付かせて挨拶する。
しかし、そんなライドの態度に腹を立てたのか、真っ赤な髪を左右に縛った件の少女は目尻を上げて、
「ご入り用ですか? じゃないわよ! あんたね! いい加減今月の家賃払いなさいよ! もうとっくに支払い期
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