第一話 小さな町の売れない技師
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に言いにくいのですが、不純物に弱くて……」
「なんだと? では、川の水や動物の血液はどうなのだ?」
「川の水はちょっと……。動物の血液でしたら、不純物が入らないように何度も布か何かで濾してもらえばなんとか。肉片とか混ざってしまうと故障──」
「ならば! 飲料水が手に入らないような環境で! 泥水も樹液も血液も転用できないようなこのポンコツの使い道を説明してもらおうか!」
少年の説明にいよいよ腹を立てたのか、立ち上がりながら怒号を放つ戦士風の男に「ひィっ!」と、思わず悲鳴を上げてしまった少年だったが、それでも技術者としての、そして商人としてのプライドが勝ったのか、そんな状況での解決策を口にした。
「例えば、おしっこ──」
「邪魔したな!!」
少年の答えを最後まで聞くこともなく、戦士風の男は机を蹴り上げると大股で店から立ち去ってしまった。
後に残ったのは、蹴り上げられた机と自らの作った“魔道具”の下敷きになりながらぼんやりと天井を見上げる少年のみとなった。
「……せめて今ので壊れでもしたら、弁償してもらうことも出来たかもしれないのに……」
ひっくり返りつつも、自らの腹の上に傷一つ付かずに転がっている自慢の逸品を見ながら少年は呟く。
「繊細な機能に強固な外殻。いい出来だと思うのに何で売れないんだろ」
もしもこの場に常識的な人間がいたならば、少年の発想に問題があると指摘したのだろうが、あいにくこの物置小屋に来訪する人間はそれほど多くはない。
そもそも、先程の男自体一週間ぶりの客になるかもしれなかった男だったのだ。それを逃してしまったのは少年にとっての痛手以外の何者でも無かった。
「……腹減ったな……」
お腹の音と共に少年の力無い声が切なく響く。
それはある意味この場所ではいつもと変わらない日常だった。
少年の名はライド。魔石を核とする魔道具を制作、販売することで生計を立てる魔道技術者である。
ナムル大陸では珍しい黒髪からわかるように、この地方では無く別の大陸から渡ってきた元行商人であった。
そんな根無し草であったライドが辺境の町カンタールに腰を下ろしたのは、カンタールの町の傍にまだ誰も見つけていないであろう魔石の鉱脈を発見したからだった。
──魔石──
それは一見すると唯の石ころだが、その正体は魔力が凝縮、固形化した言ってみれば魔力の塊である。
そのルーツはかつて魔法が存在した時代に使用された魔法が凝縮された物とも、魔力が凝縮されたものに魔法の力が宿った物とも言われているが、正直ライドにはそんなものはどうでもよく、重要なのは自分の飯の種が『無料で入手できる』こと一点のみであった。
魔石は魔導技術者にとっては最もなくてはならない材料
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