遺言。 一枚目
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持ち悪いじゃん」
せっかく額縁の中に捕まえた小鳥を空に返したくはないものです。
俺の言葉に、由生はまた苦笑しました。
「怖がりだなあ、ヒロは」
「だって嫌だよ。…まあ、変じていくものも、いい所はたくさんあるけどね。でも永遠とかもいいじゃない。俺は変わらない方が好き」
「ヒロが俺の制服姿を描いてくれれば、僕元気になるかも」
「あはは。そうなったりしてな。今度やってみるか。じゃあ、今度スケッチブック持ってくるから、由生を描こうっと」
「え…。いやでも、ヒロの絵はすごく好きなんだけど、モデルって何となく恥ずかしいからさ…。あと結構疲れるし…」
「ビックリするくらい体力勝負だよ、モデル」
「だよね」
「由生で一番描きやすいのは、やっぱ爆睡してる時だな。あんま寝相悪くもないしね。見舞いに来て寝てると人形っぽい」
「え…! 寝顔なんて描かないでよ!?」
「あ…。うそ、悪い。結構描いたかも」
「プライバシーの侵害だー!」
夢物語から始まって、そんなことを話し合いました。
ぎゃあぎゃあと珍しく焦っている由生の反応があんまりハイにならないうちに、どうどうと落ち着けて、今度証拠品を持ってくるからチェックしてもらうという話になってその日は終わったのです。
ふと腕時計を見ると、三時近くになっていました。
俺は席を立ち、由生を振り返ります。
「お茶にしようか。下のスタバ行ってくるよ。何がいい?」
「ありがとう。何か甘いもの」
「温かいのと冷たいのは?」
「温かいのかな」
「OK。…じゃ、待ってて」
「うん。行ってらっしゃい。カード使う?」
「いや、いいよ」
財布を持って病室を後にしました。
大病院なので、一階にあるフードエリアは半端なく店揃えが良く、カフェやらファストコーヒー系やらファミレスやら、案外何でも揃っています。
でも、例え揃っていても、あまり出歩くことを良しとされない由生にとっては滅多に来ない場所です。
本人は余裕らしいのですが、やっぱり周りが止めることは仕方がありません。
そして、少しベッドを離れると廊下入口のナースステーションで「何処へ行っていたのだ?」と度々聞かれれば、それは本人も自然と外出を控えます。
他人に心配されてそれを無視できる程、彼はクールではないのです。
ですから、その分俺が動きます。
言葉での表現力がないので馬鹿みたいな表現になりますが、俺は王子を守る騎士のような由生と自分の関係を気に入っていました。
日が暮れてくると同時に、名残惜しいが俺は由生の病室を出ました。
そしてその晩、夕食を食べ終わった後の時間に、部屋の机で絵を描くことにしました。
丁度、雑記用のスケッチブックが残り少なかったので、部屋の端にある程度溜めている新しいスケッチブックの中から大
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