前置き
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ますか?
滅多に買い物に出ないから、病院近くのモールでちょっと服を見て回り、たった一着私服を買う為に出かけただけでそりゃあもう大騒ぎで、あれが似合うかこれが似合うかと行ったり来たり。
彼は私服を滅多に着ないので、由生にとって今時の私服は正装のような感覚なので気合いも入るのでしょうが、付き添いの私などは見ていてあんまりハイテンションにならないで欲しいとおろおろしてしまいます。
毒気も抜かれます。
私は彼が大好きです。
由生は、未だに夢と希望に満ちた“少年の世界”にいる。
彼といると、まるで聖域のような世界の中の特別美しいエリアに私もいられる。
であるから、彼に合わない臓器を持っている世の中の人間が嫌いで仕方ないのです。
こんなにわんさかいるんだから、一人くらい合っていろよと思うのが正直なところです。
医者も医者だ。無能め。
どいつもこいつも、役立たずのクズばかり。
勿論、私も含めてです。
彼といるのは楽しいけれど、時々無性に、この皮の内側にある臓器を彼にあげられないことが、本当に無念で口惜しい。
…大体、外部から検査するだけで本当に合わないんですか?
一回オペして取りだして、由生に填めてみて合わなかったら諦めますけど、一度やってみてほしいくらいです。
なんなら、関係者片っ端から切り開いて試してほしいくらいとか、考えています。
…ええ、勿論そんな馬鹿なことを真剣に思っている訳ではありません。八つ当たりであることもちゃんと分かっています。
けど、このままでは由生は近いうちに死んでしまう。
二十歳までは難しいかもしれないと、由生の母親はその年の頭に俺に話してくれました。その時の記述もたしか何処かに……いや、まあいいか。どうでも。
そんなことよりも、どうにか彼の時間を止められないだろうか――。
私の願いはそれだけでした。
本当は一緒に成長したいが、そこまでは望まない。
だからせめて、彼の時間を、ある日突然ぶっつりと切らないで欲しい。
細く連なる寿命の糸が切れてしまう日を、私はもうそれまでの何年も怯えて暮らしていました。私の寿命の半分でもいい。彼にあげたい。
そんな時です。その本に出会ったのは。
それを勧めてくれたのは、他ならぬ由生でした。
だから運命だったのだろうと思うのです。
私は、どちらかといえば非科学現象を信じない人間です。
自分で幽霊の一つでも見ればいいけれど、生憎経験が無いものですから。
でも、自分で見ればおそらく信じるのでしょう。
それが『幽霊』なのか、『幽霊と私の脳が認識した何らかの物体』なのか、『幽霊と私の脳が認識した幻覚』なのか、そこのどれなのかは別として、おそらく『幽霊っぽいものを見た』ことは信じるはずです。
私は何も堅物な学者ではありません。
一般人である私にとって、プロセス
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