SAO編?―アインクラッド―
第二章―リンクス―
第17話?木ノ芽風と花風
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け嫌な予感がして、ないはずの心臓が跳ねる。だが、どうしても聞きたかったのか、軽く首を左右に振って口を開いた。
「よく戻ってこれたわね……あんなことがあったあとに……」
「…………そうだね。僕もそう思うよ」
?あんなこと、というのは第二十五層のボス攻略のことだろう。どうやら僕はアスナにも心配してもらっていたらしい。
「あのとき、わたしは何もできなかった。何もしてあげられなかった。でも、あなたは戦場に帰ってきてくれた。……正直、尊敬するわ。あなたの強さに」
「……別に僕は強くなんかないよ。強かったら、きっと抜けることはなかったんだから」
「それは違うわ」
「いいや、違わないよ」
「……っ!」
?断固として否定する。今までとは違ってはっきりとした僕の言葉に、アスナが小さく息を飲む。
?――強くなんかない。強いわけが、ないんだ。
「強かったら、きっと受け止めきれたはずなんだ。でも、僕には無理だった。もしかすると、ずっと無理なのかもしれないな……」
「ユウ……」
「僕が最前線に戻ってきたのも、もうあそこが僕の居場所のひとつみたいになってるからだよ。悲しいけど、攻略組なんて呼ばれる場所にずっといたから、あそこにいない自分を考えられなくなってしまってる。あそこに立ってないとダメだって思ってる。僕が戻ってきたのは、そういう……エゴからだよ」
?もちろん、レベルが高いから、というのも偽りのない理由だ。だけど、この理由もないわけじゃないのだ。自分がこんなにも醜悪で嫌な人間なんだ、と思わずにはいられないが、これも紛れもない事実である。
?疾風という僕についた二つ名。あれは、僕にとって呪いだ。爽やかに思える言葉だというのに、僕の心にはまったくそんなものはない。どちらかというと、小虫や砂利など不快なものが入ったような風が心を吹き抜ける。呼ばれる度に、あのときの光景が無理矢理、勝手に頭のなかでリフレインされる。
?だが、僕もそろそろ愚痴愚痴言わずに受け止めなければいけない。付いてしまった――憑いてしまったからには、仕方がないのだから。ソラのような中層プレイヤーたちに広まっていくのも時間の問題だ。言われることにも慣れなければいけない。まだまだ先は長そうだけど。
?鼻から静かに息を吐いたあと、雰囲気を変えるべくにっと口許をつり上げる。
「まあ、そういうわけだから僕のことなんか尊敬なんてしないでいいよ。アスナの方が断然すごいからね」
「別に、そんなことないわ」
「いやいや、アスナのたてた作戦のおかげでここまで攻略できたんだ。いつも感謝してたんだよ。ありがとうね」
?アスナがどう返したらいいのかわからない、という風に戸惑っているのを少しニヤニヤしながら見ていると、カグヤがやって来た。
「ちょっと、ユウ。私の友達をいじめないでよ」
「僕お礼言っただけ
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