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ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐
第1章転節 落暉のアントラクト  2023/11
貴方へ贈る物語:仄暗い情念
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んを()()()()なんて思えますかねぇ?」
「………つまり、君は何が言いたいんだ?」


 思わず、聞き返してしまう。
 これまでにような苦言じみた内容ではないにしても、それまでの前提――――私の薄弱さによる現状への
指摘ではなく、向きを真逆に変えたような問いかけ。既に思考をやめてしまった私には、その彼女の提示した未知に惹かれていた。

 
「こんなにわたしに意地悪な事を言われても、貴方は奥さんについての不満を零しませんでしたぁ。貴方は本当に奥さんを信じているんですねぇ〜。
 でもでもぉ、奥さんが貴方を裏切っても気にも留めないなんてぇ、こんなに苦しんでいる貴方への冒涜以外の何でもないですよねぇ?」
「………………それは………」


 その通りだ。内心で、彼女に頷く。
 この現状に、開いてしまった夫婦間の溝に心を痛めているのは私だけだ。彼女は一切気にも留めてはいないだろう。
 それに、彼女だって言っていたではないか。剣を取る勇気があるのならば愛する者を慰めるだろうと。私が圏外へ向かえるくらい勇気に満ち溢れ、妻が怯えていたならば、私は間違いなく妻を労わっていた。何に代えても、この世界が齎す恐怖から妻を護る盾となっていた筈だ。愛する者には当然の行為だ。なのに、どうして………

――――どうして、妻はこれほどに苦しむ私を見てくれないのだろう?


「あ〜、そ〜言えばぁ、圏外へ出るのだって一人じゃ危ないですよねぇ〜? お仲間さんなんていたりするんじゃないですかぁ〜? 今頃楽しそうにしてるんじゃないですかぁ? 貴方の事なんかすっかり忘れてぇ………これじゃぁ、辛いのって貴方だけですねぇ」


 生じた怒りが、蓄積した鬱屈を喰らって燃え上がる。
 彼女はこの世界に閉じ込められてから、目覚ましく変化しただろう。
 地に墜ちる私を差し置いて、彼女は強い輝きを得た。剣を扱うセンスは、元来剣士であった私を呆気なく凌駕した。ささやかながらに仲間を募り、ギルドを設立してプレイヤーを鍛え始めた。実力を伴ったカリスマ性はギルドメンバーを惹き付け、その絆を強固にしていった。
 私だけのユウコは、いつしか私以外の誰かに必要とされる戦士となっていた。私には、そんな彼女を誰かの後ろから遠巻きに見つめるしか出来なくなっていた。思えば、この溝は、心の距離は、彼女の行いによって生じていたのだ。

――――つまるところ、この苦しみは彼女が(もたら)したものに他ならない。

 だが、私はそれでも妻を許し、これまでと同じように愛し続けるだろう。
 多少、変わってしまうところがあるかも知れないが、私にはそれしか考えられない。


「ですからぁ、わたしが及ばずながらお力添えしようかなぁ〜と思いましてぇ」
「私を助
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