守られるよりも共に戦いたくて
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ん、と適当な返事をして落ちている鞘を拾い上げる。
「そう言えば自己紹介がまだだったな。俺の名前は土方十四郎、見ての通り太刀で妖刀。腕次第じゃ大概のもんはぶった斬れると思って良い」
「へぇ、案外凄ぇなアンタ。俺は沖田家十三代目当主の沖田総悟、これでも一人前の武士でさァ。剣の腕なら当第一、歳は今年で十八」
「沖田……総悟?」
名前を聞いた途端に土方さんの顔色が変わる。傷付いたような、悲しいようなーー複雑な表情。
「……俺の名前がどうかしやした?」
「いや、何でもねェ……顔も似てると思ったが名前もかよ……総悟って呼ぶぞ、異論は聞かねェ」
意味不明な呟きの後にいきなり呼び捨て宣言され、眉を寄せる。
「何でいきなり呼び捨てなんでィ、主なら普通、様とか付けんでしょうが」
「良いんだよ、その方が呼びやすいし総悟に様付けとかムカつく」
「ムカつくって何だ土方コノヤロー!」
ドカッ!
「テメッ、いきなり殴るのは卑怯だろーが!」
拳がまっすぐに飛んできてひらりと躱す。そのまま殴り合いの喧嘩に発展し、蔵の中は滅茶苦茶になった。
「まさかテメーが俺の主なんてな。とんだ偶然もあったもんだ」
膝枕をして静かに俺の前髪を梳いていた土方さんがどこか懐かしむように呟く。瞼を上げると、珍しく穏やかに目を細めた土方さんと目が合った。
土方さんと蔵で出会って相棒にしてから約一年。俺はしっかりと土方さんを刀として使いこなし、また関係も深くなっていた。
いつの頃からかお互いに恋心か愛情に近い感情を抱き、擬人化した土方さんを抱くようになった。土方さんも当然のようにそれを受け入れた。
「何言ってんでィ。俺とアンタは運命ですぜ」
「運命……フ、確かにそうかもな」
髪を梳いていた手が額に触れ、ヒヤッとして気持ちが良い。
俺も無性に土方さんに触れたくなって身体を起こして正面から向き合い、その頬に両手を伸ばすと容易に手が届いて触れる事ができた。本来人ではなく刀である土方さんの体温は人よりも低く、暑い季節には氷がなくとも土方さんに触れていれば充分涼しい。
「……総悟、実はまだお前に話してねェ事がある」
両側の頬を包み込むようにして顔を近付けた時、土方さんはまっすぐに俺を見つめながらそう告げた。
「何でィ、ちったァ空気読みなせぇ。このままチューする流れだったでしょうが」
「……悪ィ。だが大事な話だから真面目に聞いてくれ」
罰が悪そうな顔をしながらも意思を曲げるつもりはなさそうな土方さんに、一旦チューは諦めて頬に添えていた手を背中に回して抱き寄せる。俺の体格では土方さんの全てを包み込む事ができず少しだけ悔しい気持ちになる。
「分かりやした。真面目に聞くんで、暫くこのままの体勢
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