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MUV-LUV/THE THIRD LEADER(旧題:遠田巧の挑戦)
閑話T 巧の中学生活
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その時は大した興味もなく、『頭がいい子がいるなぁ』ぐらいにしか感じていなかった。
巧が実際に夕呼と言葉を交わすようになったのは二年の秋である。林間学校の計画について各クラスの代表が話し合う機会があった。この頃の学校では林間学校が通例行事だった。帝国は未だ戦禍に巻き込まれていないとはいえ、今後の状況の推移によっては疎開をしたり、野外でキャンプを張らなくてはならないかもしれない。そうでなくても大多数の男子は徴兵された際に軍事訓練を受けることになるので、その予行演習のような位置づけとして、国の教育制度に組み込まれていた。
巧は訓練があるので基本的に放課後のこらなくてはならないような仕事は引き受けなかったのだが、その日はクラス委員長が休みで、その代理として選ばれたのが巧だったのだ。
そして夕呼もまた代理で参加していた一人だった。夕呼のクラスの委員長である神宮司まりもという女子が風邪をひいて休み、その代理を友人である夕呼が引き受けることになったのである(夕呼は嫌がったが、まりもが泣きついたため仕方なくであったが)。
話し合いは盛り上がっていた。実践的な授業という位置づけの林間学校ではあるが、生徒たちにとっては数少ないお泊りイベントの一つ。それを盛り上げるために熱心な話し合いが行われていた。子供のころから野外訓練を受けてきた巧にとっては遊びのようなもので、話しあいも学習的な内容ではなく、キャンプファイヤーの時にどんな企画をするかとか、オリエンテーリングの時の組み合わせとか、おやつは何円までだとか、そんな話だったので興味もなく聞き流していた。そして夕呼もまた詰まらなそうに聞いている一人だった。
話が進まずイライラしてきた巧であったが、和気藹藹と話している同級生たちに水を差すのも気が引けるという如何にも日本人的な遠慮が働いて口を挟まないでいた。そんな時、急に夕呼が立ちあがって帰ろうとした。それを同級生たちが咎め、態度を改めるように文句を言うと夕呼は白けた目で同級生たちを見渡し言った。
『まりもに泣き付かれたから来て見たけど、こんな意味のない話し合いで時間を浪費するなんて馬鹿らしいことしたくないの。お子様同士好きに決めれば?無駄なことに頭のリソース使いたくないのよ。』
そう言い放ち静まり返った部屋を見渡すと、ごく自然な態度で去っていった。
夕呼が出て行ったあと教室は夕呼の言動に対する怒りで騒然となったが、巧は去っていった夕呼に見とれていた。自分は周りと合わせて事なかれ主義でいたところで、夕呼は自分の意見をはっきりと言って去っていった。その姿は颯爽としていて、物言いも夕呼の怜悧な美貌に合っていた。周りの同級生とは違う、今まで自分が会ったことのないタイプの女子。
そんなちょっとした切欠だったが、その日から巧は夕呼のことが気になり、眼で追うようにな
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