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独裁者二匹
5部分:第五章

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第五章

「ウゥ〜〜〜〜〜〜ッ」
「そんなこと言うな、か」
「ワン」
 その通りだというのだ。
 そしてだ。また鳴いてきた。
「ワン」
「とにかく寄越せか」
「ワンワン」
 今度は二回鳴いてきた。それも強い。
 それを聞くとだった。昌哉も観念するしかなかった。そうしておかわりをやる。二匹の我儘はとにかくエスカレートする一方だった。 
 家は完全に二匹の為にあるものになっていた。まさにやりたい放題である。昌哉はその我儘の世話をしていたがうんざりとしてだ。ある日リビングでテレビを観ながらだ。両親に対して話した。
「あのさ」
「んっ!?」
「どうしたの?」
「ワンとカミナリのことだけれどさ」
 話すのは当然二匹のことについてだった。それ以外にはなかった。
「あのさ」
「あのさ?」
「何かあったの?」
「我儘過ぎない?」
 単刀直入に言った。
「本当にさ。我儘過ぎない、二匹共」
「いいじゃないか、動物だし」
「そうよね」
 しかし両親はそれを聞いても呑気なままだ。その顔でテレビを観ている。クイズ番組であるタレントが壮絶な回答をしてテレビの中で爆笑が起こっている。
 それを観ながら我が子の言葉に応えていた。そうして言っていた。
「別にな」
「それ位はね」
「何処がそれ位なんだよ」
 しかし彼は言う。
「本当にさ。昨日も今日も我儘ばかりで」
「全然我儘じゃないし」
「全くね」
「何処がなんだよ。だからさ、少しは怒って欲しいんだけれど」
 本音を出した。
「お父さんもお母さんもさ」
「怒る必要はないからな」
「ええ、そうね」
 相変わらずの調子である。しかしだ。
 両親はここでこうも言ってきたのだった。
「ただな、御前もな」
「どうなの?」
「僕はって?」
「だからだ。御前はだ」
「あんたはどうなのよ」
「僕はって」
 言葉を振られてだ。昌哉はまずはきょとんとした顔になった。そうしてその顔でその両親の言葉に対して応えるのであった。戸惑ったまま。

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