第二十七話 デートじゃないのにその七
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「色々としてもらったんですよ」
「その人のこと大事なのね」
「だから御祖母ちゃんみたいなもんですよ」
「本当の御祖母さんは?」
「母方が九州にいます」
九州ですか。いきなり急に遠くなった気がします。
「父方はもう死んじゃいまして」
「出直されたのね」
「出直し!?ああ、あれですね」
この言葉はもう勉強したみたいです。
「死んだことを天理教ではそう言うんでしたね」
「そうよ。また生まれ変わるからね」
「何度生まれ変わっても親子とかっていうのは」
「魂のいんねんではあるわね」
どうも何かの時代劇で聞いたような。
「そういうこともね」
「そうなんですか、不思議ですね」
「世の中ってとても不思議なものよ」
このことも阿波野君に言いました。ここで信号が青になりました。
「何があるか本当にわからないから」
「それはよく言われていますね」
「特にね」
ここで私は一歩踏み出しました。阿波野君もそれに合わせてくれます。
「ここおぢばはそうなのよ」
「不思議なことが多いんですか」
「ふしぎやしきとも言われてるわ」
これは子供の頃に系列の教会の会長さんに教えてもらったことです。天理教のことは知ってるつもりでしたけれどこの言葉ははじめて聞きました、その時に。
「色々なことを見せて頂くのよ」
「へえ」
「それにね」
「それに?」
「色々な人と思わないところで会ったり再会したりするから」
これは私にも実際に何度もあったことです。そういえば今横にいるこの阿波野君にしろです。思えばお引き寄せで一緒にいるんでしょうか。
「だから不思議なのよ」
「面白い場所なんですね」
私の横を歩きつつ言ってきました。
「ここって」
「そうね。本当に色々と見せて頂いたり出会いがあるから」
「いきなり思わぬ人との出会いですか」
何故かここで私の顔を見てきました。
「成程ね」
「?どうしたの?」
そんな阿波野君に気付いて問い掛けます。
「そういうことなんですね」
「そういうことって何よ」
「いえ、別に」
何かまたすっごく引っ掛かる言い方でした。
「何もないですけれどね」
「いつも思うけれどそうは見えないけれど」
怪訝な顔で阿波野君にまた言います。
「言いたそうじゃない」
「まあ別に今はいいです」
「いいって。本当にいいの?」
「はい。それでですね」
何か話題を変えてきました。
「信者さんのところ言ってこれを届ければいいんですよね」
「ええ、それはね」
どうも阿波野君と話をしていると調子が狂います。どうもこの子のペースで進められてしまって。気付けばいつも私が押されている感じです。
「そうよ。もう何処かは言ったし」
「それじゃあ二人で、ですね」
「行くわよ」
「ええ」
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