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戦国異伝
第二百五十三話 最後の合戦その六

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「この戦は勝てる」
「はい、そうですな」
「勝てます」
「敵を一人も逃さずに」
「そのうえで」
「うむ、勝てる」
 間違いなくとだ、信玄も答える。そして。
 魔界衆の中のだ、石川五右衛門を見て言った。
「音羽の城戸は北条殿が向かったが」
「お館様はですな」
「あの者を討ちますな」
「石川五右衛門を」
「そうする」
 こう言うのだった。
「魔界衆十二家の一つ石川家の棟梁」
「ここで逃がしてはなりませぬな」
「万が一にも」
「必ずここで討ち」
「後の憂いを絶つべきですな」
「完全にな」
 まさにという言葉だった。
「ここで絶つべきじゃ、だからな」
「あの者はお館様が討たれる」
「そうされますか」
「あの者はまだ少し遠くにいるが」
 はっきり見える場所にいる、しかし刀が届き勝負が出来るまでには離れている。それで遠くと言ったのである。
「それでもな」
「必ずですな」
「あの者の前まで行き」
「そうして」
「討つ」
 今度は一言だった。
「必ずな」
「はい、では」
「これより」
「天下の為にも」
「あの者を討ちましょう」
「是非な」
 こう言ってだ、そしてだった。
 信玄もまた棟梁を狙っていた、次第にだったが。
 天下の軍勢は徐々にだった、魔界衆の棟梁達に近付いていっていた。それは棟梁達も察していてそのうえでだった。
 お互いにだ、血走った目で言い合った。
「間もなくな」
「うむ、近くに来たぞ」
「我等の近くに」
「こちらを見ておるな」
「はっきりとな」
「こうなってはな」
「それでもじゃ」
 老人は他の棟梁達よりもだった、血走った目でだった。
 そしてだ、こう彼等に告げた。
「織田信長を倒すのじゃ」
「あの者だけは」
「何としてもですな」
「この天下の幹になっているからこそ」
「ここで倒す」
「そうしますな」
「そうする、しかし御主達は枝を切れ」
 幹から生えているそれをというのだ。
「幹はわしがやる」
「そうですか、御前ががですか」
「幹を切られますか」
「そうされますか」
「そのうえで何としても去り」
 この壇ノ浦からだ。
「そしてな」
「はい、そして」
「そのうえで、ですな」
「また力を養い」
「蘇るのですな」
「命さえあればな」
 それで、というのだ。
「また動くことが出来る」
「この天下を闇からですな」
「乱すことが出来る」
「そうなるが故に」
「織田信長、ここにいる者達を倒し」
 そしてとだ、さらに言った老人だった。
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