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独裁者二匹
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第一章

                       独裁者二匹
 国宝昌哉が家に帰るとだ。何かがいた。
 家の居間の隅から気配がする。それはわかった。
 それで母に問うた。出した言葉はこれだった。
「何かいるの?」
「養子入れたから」
 すると母はにこりと笑ってこう彼に言ってきたのだった。
「養子をね」
「養子!?」
「そう、あれ」
 こう言ってその居間の隅を指差す。するとそこには一匹の猫がいた。
 四ヶ月位だろうか。子猫だが少し大きい。頭が丸く目がやけに黒い。しかも大きく丸い。白地で所々に黒や白が入っている。何処かホルスタインを思わせる。そして一番目立つのはその耳だ。どちらも見事に垂れているのだ。
 昌哉はその耳を見てだ。すぐに母に問うた。
「スコティッシュフォールド?」
「そうよ、スコティッシュフォールド」
 母も猫の種類を言ってきた。
「それよ」
「何でまた急に猫なんか」
「前から欲しかったのよ、猫がね」
 母の彼への返答はこうしたものだった。
「それでなのよ」
「猫をって初耳だけれど」
「それでもいいじゃない。とにかく猫飼うから」
「また急に話が決まったね」
「そうでしょ。じゃあこれから可愛がってあげてね」
「わかったよ。それじゃあね」
 こうしてその猫は昌哉の家に飼われることになった。猫はこの日は部屋の隅でガタガタ震えているだけだった。彼はそれを見て不安な顔になった。
「大丈夫かな、これで」
「ペットショップの人の話だとお店の猫の中で一番悪かったそうだけれど」
「これで?」
「我儘で脱走の常習犯で」 
 こう彼に話してきた。
「すぐに何か悪さをしていたらしいわよ」
「これでなんだ」
「そうよ、これでよ」
 そうだというのだ。
「お母さんにもそうは見えないけれどね」
「当然僕にもだよ」
「まあとにかく」
 母はまた彼に言ってきた。
「この猫御願いね」
「うん。そろそろお父さんも帰って来るしね」
 そして暫くしてその父が帰って来た。するとだ。
「養子来たぞ」
「まさかまた」
 昌哉は玄関から聞こえる父の声を聞いてだ。まさかと思った。
 そして実際にだ。玄関に行ってみるとそこに一匹の黒毛の犬がいた。全身黒で小さい狼に似た外見の犬である。それがへっへっへっ、と舌を出していた。
「それって」
「ああ、ペットショップで売れ残っていたの買ってきたんだ」
 そうだというのだ。
「どうだ?男前だろ」
「まあね。うちで買うんだよね」
「勿論だ。新しい家族だからな」
 昌哉に対して笑顔で言うのである。
「可愛がるようにな」
「あれ、犬なの」
 ここで母も玄関に来て言ってきた。
「猫が今日来たのに」
「あれ、猫もいるのか」
「ええ、そうよ」
 
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