巻ノ三十八 双槍その七
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「まさに身一つですな」
「はい、誰も助けるものではなく」
「己だけで逃げるもの」
「ですから」
「その二つはですな」
「槍や刀、忍術よりも」
そういったものよりもというのだ、尚幸村は弓矢よりもどちらかというと鉄砲や手裏剣を得意としている。忍術のうちにも入れている程だ。
「大事なので」
「その通りですな、やはり源四郎殿はです」
「それがしはといいますと」
「わかっておられます」
兼続は幸村に確かな声で答えたのだった。
「武芸が、そして武士というものが」
「その備えるべきものは」
「まずはその二つです」
馬術に水練だというのだ。
「二つを最もされて身に着けられてこそ」
「そうしてですな」
「他の武術がはじまります」
「では」
「はい、これからもです」
「その二つは欠かさぬよう」
「絶対に励んでいきます」
幸村も約束した、そして実際に彼は春日山城においても馬を乗れる場所で盛んに馬に乗り泳げる場所で泳いだ。
十勇士達は幸村よりも馬はしなかった、だが。
水練は彼と共に励んだ、それで泳ぐことを許された場所でだった。
十一人で泳ぎつつだった、幸村に問うた。
「我等馬はです」
「忍の者故どうも性に合いませぬが」
「それでもです」
「水練はです」
「うむ、皆見事じゃ」
幸村も彼等の水練を見て言う。皆褌だけになって水に入りそのうえでまるで魚の様に泳いでいる。
「特に海野六郎がじゃな」
「はい、水については」
その海野が答える。
「やはりそれがしじゃな」
「全くじゃ、水についてはじゃ」
穴山も彼に言う。
「御主には負けるわ」
「同じ六郎でもな」
その同じ名を持つ望月の言葉だ。
「負けるわ」
「御主は河童じゃ」
猿飛は海野にこう言った。
「わしは猿でな」
「わしは熊か」
清海は自分をこう言った。
「大きいからのう」
「いやいや、河童もです」
伊佐は穏やかに微笑んで言った。
「海野殿には負けますな」
「わしも水練には自信があるが」
霧隠も見事に泳いでいるがだ。
「負けるわ、どうもな」
「わし等はそれぞれ得手があるが」
由利も海野を見て言う。
「水はこ奴じゃな」
「ふむ、では水での戦の時は」
根津も言う。
「こ奴が第一じゃな」
「それがいいであろう」
筧も根津の意見に頷く。
「やはりな」
「拙者もそう思う」
水での戦の時はとだ、幸村も言うのだった。
「水での戦は海野六郎じゃ」
「ですな、第一は」
「やはり」
「それぞれの戦の仕方で得手不得手がある」
十勇士達それぞれにというのだ。
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