御使いのいる家 ぱ〜と4
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哀しみ。
それは人が人であるが故に、生きているが故に、ずっと抱え込まなければいけない心。
しかし、サクリファイは最近までこの哀しみを絶対的な感情として生きてきた。
哀しみは誰しもが心に抱えているものだ。確かにそれは感じる当人にとっては絶対的な物なのかもしれない。しかし、生きとし生ける物には生きて前へ進む義務があるのであり、サクリファイの哀しみはそれを真っ向から否定するものだった。
今あるものを失いたくない。永遠に残したい。前に進んで更なる哀しみを味わいたくない。一つ一つ積み重なる哀しみはやがて我儘と遜色ない位まで堕落し、思い知らされる。
命の輝きを失った自分たちこそが間違っていたという、哀しみ。
「悲しみの乙女」ハマリエル――いや、セツコの悲しみは、痛みや傷を抱えながら前へ進もうとする健気な強さがあった。ある意味、彼女の在り方は「いがみ合う双子」以上に人間的で、他のどのスフィア・リアクターより気高いものと言えるだろう。「いがみ合う双子」は誰の心にもある葛藤や二律背反、勇気を根源としているが、「悲しみの乙女」は抗いようもない大きな絶望の中から自力で這い上がらなければならない苦難の道だ。
ある少年が、「いくら綺麗に花が咲いても、人はまた吹き飛ばす」と言った。それに対して別の少年は「いくら吹き飛ばされても、僕らはまた花を植える」と答えた。今になって思えば、この言葉こそが御使いとZ-Blueの戦いの本質をよく表している。
御使いがいくら命や真化の花を刈り取ろうとも、人類は決して存在することを――「ここにいる」ことを諦めない。それが生きるという事であり、無明の暗闇を照らす希望の灯となことを知っているからだ。
「消滅しようとする力より、存在しようとする力の方が強いとは言いません。しかし、存在する力はそれだけの可能性を秘めた存在なのです」
「そんな……だって私は宇宙の存続のために可能性を刈り取っていたのですよ!?その可能性を生み出す土壌を滅ぼさぬようにずっとずっと……!!」
「貴方の哀しみが今の私には分かります、カリ・ユガさん………しかし、それを越えられるのが人類なのです。私たちは真化の果てに……そして貴方は可能性の集約の果てに人類に斃された。それがこの宇宙の出した答えなのです……!貴方は泣いてもいい。哀しんでもいいのです……」
「サクリファイさん!サクリファイさぁん……!!う、うええええええええええええん!!エンドオブリバース怖かったよぉぉぉぉぉ〜〜〜〜ッ!!!」
手に持っていたチューハイのジョッキを投げ出したカリ・ユガさんは大粒の涙を流しながら私に抱き着いてきました。
現在、私ははよかれと思ってミツルの財布から失敬した1万円札を元手に彼女と「イザカヤ」という場所に来ています。普
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