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スイーツの工夫
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第一章

                      スイーツの工夫
 今この男は悩んでいた。それもかなりだ。
 そしてだ。こんなことを言い出した。
「どうしてチョコレートは黒か白しかないんだ?」
 言うのはこんなことだった。
「他の色はないのか」
「他の色って何よ」
 横からだ。小柄で黒髪を後ろに束ねた女の子が言ってきた。大きな黒目がちのアーモンド型の目に大きめの唇の薄い口、形のいい眉。その彼女が彼に言った。
 その彼はだ。細めの量の多い茶色がかった髪を耳が完全に隠れるまで伸ばし少しアヒルに似た、だが小さい唇を持っている。二重の目は大きめで横に開けている感じだ。そしてその目から黒い光を放っている。
 背は少女と比べて二十センチは違う。その彼の言葉に突っ込みを入れたのだ。
「チョコレートの色に他に何かある?」
「ないか?」
 彼は少女に問い返した。
「他にないか?」
「ある訳ないでしょ」
 少女の返答は即座であった。
「チョコレートって大体何からできてるのよ」
「カカオ」
「はい、カカオからよね」
 少女はこのことを強調する。
「だったらそこからできるものは黒いに決まってるじゃない」
「けれどホワイトチョコがあるぞ」
「あれはあれよ」
 いささか強引にそう言い切った。
「とにかくよ。チョコレートは黒よ」
「それか白か」
「この二色の他に何があるのよ」
「だからないか?」
 あらためて少女に問うた。
「その二色の他に。ないか?」
「聞いたことないわよ」
 少女ははっきりと言い切った。
「その他にはね」
「そうか、やっぱりな」
「お兄ちゃん何か考えてるの?」
 少女は彼を兄と呼んだうえで問うた。
「ひょっとして」
「何かっていうかな。だからチョコレート菓子で他の色があるかどうかな」
「ないわよ。あのね、チョコレートは黒か白だからいいんじゃない」
「それでもだ。ここは特別なのを作ってみたいんだよ」
「その意気やよし」
「ひかるもそう思うよな」
「真道連最大の挑戦になるわね」
 お互いの名前をここで呼び合っている。
「ただしよ」
「ただしか」
「その挑戦は絶対に失敗するわね」
 こんなことをだ。兄に言った。
「間違いなくね」
「何でそう言うんだよ」
「だから。チョコレートは黒か白よ」
 ひかるはまたこの定義を出してきた。
「それ以外の色は絶対に作り出せないわ」
「絶対にか」
「そう、絶対に」
 こう言い切るのである。
「できたらかえって凄いわよ」
「そんなのやってみないとわからないだろ」
「やってみてもよ。できないわよ」
 妹はこう言ってあくまで引かない。
「そんなの。ホワイトチョコですら有り得ないものなのに」
「白いチョコがあるんならな」
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