外伝 憂鬱センチメンタル
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す?貴方が昔語った『完成人形』とこの子たちは限りなく近いように思います。この子たちが貴方の夢なのですか?」
「それは――」
『チガウよー。アタシたちは『完成人形』の後に作られたからねー』
『特別ではあるが、完成してはいない。我らが片翼しか持たぬのにはそのような意味もある……と主様がいつか言っておられた』
「この子達とは別に、もう完成させていたのですか………!」
これは正直、予想外だった。人形の専門家ではないアスフィだが、この二つの――いや、「二人」の人形は『これがそうだ』と言われてもそのまま気付かず受け入れてしまえるほどに完成されている。これ以上と言われて想像がつかない程にだ。
何せアスフィ自身、ヴェルトールの所に案内してもらう前に一度工房に持ち帰って詳しく調べてみたい衝動に駆られた。あの魅力は、ヴェルトールに会いたいという思いが無ければ抗いきれなかったろう。それ程にこの二人は精緻で美しく、そして素晴らしい。
「で、では『完成人形』はどこに!?」
「――封印したよ。アルル様と『完成人形』と3人で話し合って、そう決めた。もしかしたら日の目を見ることは二度とないかもしれない……」
「……私との約束を破ってまで、それは封印しなければいけなかったのですか?その、『完成人形』が自らの封印を受け入れるほどに?」
ヴェルトールは淡々とした口調で、告げる。
「あれが表に出れば、オラリオのパワーバランスがひっくり返る。あれは……素晴らし過ぎた。時代に現れるのが早すぎたんだ。公表すればどのファミリアだってこぞって欲しがるだろうし、あれを見れば全世界の人形師が道具を投げ出して工房を仕舞うだろう。自分ではそれを作る領域に決して辿り着けない事を悟るからだ」
彼は、端的に、こう言ったのだ。
「俺は人類の到達点の一つに足を踏み入れたのだ」――と。
= =
アスフィ・アル・アンドロメダは考える。ヴェルトールの語った「灰色の世界」を。
例えばアスフィが「どんな奇跡だって起こせる魔道具」……願望器とでも言うべきアイテムを開発したとする。それが物質として存在し、願う人間がいれば、願望器はどんな無理難題でも叶えてくれるだろう。そのアイテムの前では今までアスフィが造った他のどんなアイテムでさえ霞むし、それさえあれば未来永劫新商品を開発せずとも困らないし、誰も魔道具を作る努力をしなくなるだろう。
つまり、それを開発した瞬間にアスフィの技術者としての仕事は終了したも同然になる。未来永劫その先には進まないし、その後ろにも戻ることが出来ない。つまりはそれが「灰色の世界」――生きながらにして全てが止まった状態。
ぞっとした。
好きであったはずの物事に奈落へ突き
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