外伝 憂鬱センチメンタル
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ら、彼がもし生命体を作り出したいと言うのなら、それは神の領域に触れる禁忌の所業だ。
『自信家だとは思っていましたが……恐れ多いとは思わないんですかね、貴方は』
『何を言うかと思ったら、アスフィも意外と馬鹿馬鹿しい事を気にするんだな』
『ばっ……馬鹿馬鹿しいとはなんですか!!私はただ貴方が届きもしない物に手を伸ばして周囲から疎遠になり、その非凡な才能が認められずに埋まってしまわないかと心配になってですねぇ!!』
『アスフィみたいな可愛い子が認めてくれるんなら心強さとしては十分だな!』
『か、からかうなバカ猫っ!』
思わず彼をはっ倒そうとするが、反射神経のいい彼は咄嗟に身を引いたせいで私だけがバランスを崩して地面に突っ伏す形になった。非常に屈辱的で、とっても恥ずかしい。顔をあげるのが嫌になって暫く蹲っていると、彼が『俺が悪かった』と謝る声が聞こえた。気を遣わせてしまったのが余計に惨めだが、とりあえず顔をあげる。
『えっと……話を戻すケドさ。俺は別に生命の誕生を目指してるんじゃないんだよ。ただ、俺の目指す人形の究極形態ってのに近づけば近づくほど、人形は人間に近くなっていくんだ』
『それは形状が、ではなくもっと別の意味ですか?』
『ああ。俺はな………人形に動いて、考えて、喋って欲しいんだよ』
馬鹿だこいつは、と私は思った。昨今女の子でもなかなかそこまでメルヘンチックな夢を見たりはしない。それをもうすぐ成人になろうかという男が語るのだから、ここが酒場なら失笑ものだ。なのにこの男は、どこまでも本気の表情を見せる。
『それは最早人形とは言えないでしょう……求められる機能が人形の域を超えています』
『かもな。だがそれは人形としての進化を経てそこに辿り着いた訳であって、まったく別種からのアプローチじゃないだろ?からくり人形も立派な人形なんだ。自立的に動く人形だって広義で言えば人形の枠の内さ。俺は……人形に、俺の予想を超える存在になって欲しいんだ』
既にそれは作品に託す願いではないことを、彼は気付いているんだろうか。それは自分の子供、自分の弟子、自分の後に続く世代に老人が託すような願いだ。だが同時に、自分の作品とは自分の息子のような存在でもある。
道具の身でありながら勝手に行動し、成長する――異端的な、そして常人の想像を絶する目標。何がヴェルトールをそんな段階まで駆り立てたのかは分からなかったが、少なくとも今の彼にとっては夢物語のような目標の筈だ。
『滅茶苦茶な目標を追うのでは、真っ当な方法では辿り着きませんよ』
『まぁな。まず最初が難問だ。目標のためには極限まで人間に近づけた躯体が必要になる。表情が変わらない今の人形じゃ駄目なんだよ。分かるか?骨格は当然、顔の筋肉の構造や血管、神経まで模倣する。人間の身体とな
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